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葉月真琴の事件慕〜欅ホール殺人事件
【推理 推理小説】

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葉月真琴の事件慕〜欅ホール殺人事件-1

 はじめに
 この物語は「僕とあたしの事件慕」を書き直したものです。
 登場人物に変更が加えられており、官能描写も本筋にはありません。
 新たに別の主人公で始めることも考えたのですが、思いいれのあるキャラクター達なので、この形をとりました。
 過去作品を読まれた方は混乱するかもしれませんが、ご容赦ください。

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葉月真琴の事件慕〜欅ホール殺人事件

プロローグ

 四月下旬、ある日の昼下がり、桜蘭高校に昼休みを告げるチャイムが鳴り響く。
 二年B組では現国担当の坂入が終了を告げると同時に生徒達が沸き立つ。
「うぅ〜、おなかすいた〜」
 香川澪は背もたれいっぱいに伸びをして呟くと、後ろの席の桐生香苗がその手を迷惑そうにどかす。
「ちょっと澪、後ろにも気を配ってあくびしてね」
「あはは、ごめんごめん。お詫びにお昼一緒に食べてあげるわね」
「えと、それなんだけど……」
 あくびついでにストレッチを始める澪だが、香苗は目を逸らしながら意味深な青い包みとピンクの包みを取り出している。
「あら、お弁当? それも二つ。香苗ってそんなに食べるんだ。意外……」
 細身の級友の意外な大食に驚く澪。香苗は文系の部活に所属しており、普段もそれほど活動的ではなく、一人で居るときなどは刺繍入りのブックカバーで恋愛小説を読んでいるような子。
 色白、眼鏡、セミロングの髪は常に二つ編みにされている典型的な文学少女の装い。スタイルもそれほどではなく、着替えのときも恥ずかしそうに隅っこに隠れている。
 対して澪は健康的な肌色とボーイッシュなショートヘア。大きな瞳に凛とした睫が添えられている。鼻もバランスを欠かない程度に高く、唇はやや小さめ。ルージュは部活で禁止されているために引いていないが、休日のお出かけのときはポップなパッションピンクを選んでいる。
 ソフトボール部で日々汗を流していることと育ち盛りのせいか、毎日お昼が待ち遠しい。
 最近は部分的にも栄養が行き始め、下着のサイズが合わないとで金銭的に余裕がない。お弁当で足りない分を学食で補給していた彼女にとって、それは死活問題なのだ。
「もしかして……」
 ――あたしのために?
「おーい、かなえぇ〜! お昼行こうぜ!」
 都合の良い妄想をしていた澪の背後で級友を呼ぶ声。振り向くと知らない男子がずかずかとやってくる。
「あ、ごめん……ちょっと……その、待っててって言ったのに……」
 香苗は恥ずかしそうにうつむくも、男子に青い包みのお弁当を差し出す。
「彼氏?」
 予期せぬ出来事に目を丸くする澪に、香苗は白い肌を朱に染める。
「その、別に隠してたわけじゃないけど……ただ、ちょっとね……恥ずかしくて……」
「ふ、ふーん、そうなんだ……それはそれは……」
 普段、男子とそれほど交流の無い香苗に実は彼氏が居た。
 その事実に澪は上手く言葉を続けることが出来ない。


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