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〈蠢く瞳〉
【鬼畜 官能小説】

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〈蠢く瞳〉-6

『……と、言う訳で、今年も夏期合宿を行う。秋には新人の大会もある。三年生は一年生の指導をキッチリと…………』


夏休みも近付いてきた7月中旬、コートに集められたテニス部員達は、毎年恒例の夏期合宿を告げられた。
今年は街から離れたスポーツセンター。
練習施設以外には何もない、山の雑木林の中に建てられた“そこ”は、部員達からは不評であった。


『あそこってさ、遊ぶトコ無いんだよね……』

『てコトは練習漬け?やだなぁ…』


3〜4年に一度、そのスポーツセンターが利用される。

[幽霊が出る]

[誰もいないのに悲鳴が聞こえた]


そんな怪談話も噂される不気味な建物に、部員達は不平不満を愚痴りながら、それでも顧問には従うしかない。


『え〜、秋の大会。一年生の選手を発表する』


ざわめきの残る部員達の声を掻き消すように、田尻は声を張り上げた。
秋の新人大会……一年生部員達は、田尻を緊張の面持ちで、じっと見つめた。


『沢田恵……加納千秋……あとは井川夏帆。この三人だ』


部員達の間にどよめきが起きた……沢田恵と加納千秋という生徒は、小学生の時からテニスクラブにも所属しており、先輩達も一目置いていたから、その選考には納得がいく。
しかし夏帆に至っては、上達は認められても、選手になれる程のテクニックも、力も無い。
目を見開いて驚き、憧れのユニホームを手渡されて喜ぶ夏帆を見つめる先輩達の視線は、あまりに冷たかった。


『以上、解散』


田尻が職員室に戻り、部員達だけのコートの中は、なんともギクシャクした空気に支配されていた。


(なんでアイツなワケ?)

(私の方が強いに決まってるのに!!)


先輩達も、そして同級生からも、妬みとも怒りともとれる視線を浴びせられ、夏帆はその場に蹲るしかなかった。
手に入れたかった、欲しかったテニスウェア……それを抱きしめているのに、嬉しい気持ちは消え失せ、逃げ出したくなる程の居心地の悪さを感じている………瞳が悲しみの涙に潤み、ポタリと光りがコートに落ちた。


「ちょっと、田尻先生が決めたんだから、何もおかしくないでしょ?悔しいなら練習しなさいよ!!」


誰かが叫んだ……強く優しい響き……夏帆の瞳に映ったのは、棚瀬有海だった。実力のある選手からの叱責は、部員達の妬みを塞ぎ、冷たい視線を黙らせた。
そして、逆にバツの悪くなった部員達は、そそくさとコートから消えていった。


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