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過ぎ行く日々、色褪せない想い
【学園物 官能小説】

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過ぎ行く日々、色褪せない想い-14

「いえ、少しここで相談をさせてください」
「ここで? 寒いし、人に聞かれるよ?」
「お願いします……」
 いつものお茶らけた様子が一切無い和子は、江成家の二階の窓を見つめつつ、そう呟いた。
「わかったよ。付き合うよ」
「すみません……」
 相談の内容も気になるし、彼女の視線がどうしてあの部屋を見ているのか気になる。
「ねぇ、相談って……」
「はい……、私、この前弘樹君に告白されたじゃないですか……」
「ああ、アレは驚いた。普通あのタイミングで言うかな? なはは」
「ちょっぴり酷いと思います。だって、いくらなんでも先輩の前でそんなこと……」
「まぁ、もう少しムードとかあったほうがいいよな。で、それが相談?」
 あのあと二人がどういう話をしたのかは知らないが、最近の二人を見ていれば、順調であることはすぐにわかる。
「いえ、違います。あの、家庭教師さんのことなんですけど、今、いるんですか?」
 向かいの家の二階の窓は桃色のカーテンが閉められている。そして漏れる白熱灯の明かり。
「ああ、多分」
「その人って大城の人なんですよね?」
「ああ」
「若い? 眼鏡をかけてていつもスーツ?」
「うん。そうだけど、なんで知ってるの?」
「先輩に聞くのは酷なことだと思います。でも、知りたいんです。先輩の彼女、今あそこで家庭教師の人とエッチなことしてるじゃないですか?」
「え!?」
 突然のことに、言葉が出ない。一体なにを言い出すのかと。
「な、そんなこと……、っていうか、勉強中じゃないの?」
「保健の勉強かもしれませんね……」
「おい、和子ちゃん、いったい何が言いたいんだい?」
 穏やかに言うも、彼女がどうしてそんな下卑た冗談を言うのかわからなず、自然と語尾があらぶる。だが、和子はそれを意に返すこともなく、やはりあの窓を見ている。
「もし、先輩が片思いのその人と付き合えるとしたら、平気ですか?」
「なにが?」
「処女じゃなくても……」
「……ぐぅ!?」
 言葉が直接的過ぎる。童貞である悠にはリアリティの無い言葉に想像も理解も追いつかない。
「今、電気小さくしてますけど、二人はエッチしてますよ。絶対」
「なんだよ、そんなこと見ないとわからないだろ!? いったい何が言いたいんだ? 何をしたいんだ? 俺を怒らせて楽しいか?」
「今何時ですか?」
「? 七時……五十八分かな……」
「いつ終わるんですか? 家庭教師……」
「そんなこと、俺が知るわけ……」
 八時には終わるはず。毎日みていたからわかる。
「八時? 九時じゃないですよね。いつも先輩帰るの八時近くだし……」
 いつの間にか監視されていたようで、彼がどうして練習に励んでいたのかも、和子にはお見通しらしい。
「隠れましょ……」
「なんで?」
「見たいですか? セックスした後の二人……」
「いや、だから……」
 反論しようとしたところで電気が消えた。
 時計は八時五分。前に出くわしそうになって、慌てて遠回りをした時間帯。
 和子は断りなしに悠の家の門をくぐると、江成家が見える場所でしゃがみこむ。
 言いたいこともあるものの、悠もそれに倣い、彼女の隣にしゃがむ。
「和子ちゃん、後でしっかり聞かせてもらうけど、いいよな?」
「いいですけど、私の勘違いならごめんなさい。でも、多分……」
 扉が開き、美琴とあの男が出てくる。恵子の姿も見えたが、美琴が送っていくところを見届けたあと、すぐに家の奥に消える。
 門を出たところで、二人は言葉を交わす。それはとても小さく、聞こえない。


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