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嘆息の時
【その他 官能小説】

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完・嘆息の時-6

「あっ……ちょ、ちょっと、神山くん」

危険な流れを察知し、愛璃が慌てて距離を取ろうとするがその願いは儘ならない。
逆に上気を逸した神山は、サラサラとした髪を鼻先でかきわけながらソッと耳朶を唇に咥え、チュルッ、チュルッと軽く嬲りはじめていく。

「んあっ……やっ……だ、だめっ」

敏感な耳を愛撫され、たまらず首を引きながら密着した身体の間に腕を入れようとする愛璃。しかし、神山のほうはそう簡単に離そうとしない。
本気で抵抗しないかぎり、この状況から逃れることは無理だろう。
そんなことは愛璃自身がよく分かっていた。
だけどそれが出来ずにいるのは、憧れの男性に十年の時を経て突然告白され、愛璃の胸奥にもまんざらではない気持ちが湧いているからに他ならなかった。

「……愛璃……好きだ……」

低音ボイスが耳の奥にまで痺れを走らせ、それが脳さえも慄わせていく。
敏感な反応を見せる愛璃に、すっかりのぼせ上がった神山がニュウッと舌を伸ばす。そして、その舌先を耳の溝や穴の奥にまで滑り込ませる。

「んん……んくぅ……んああっ……」

一舐めごとに襲い掛かってくる峻烈な掻痒感。
まるで無数の虫がいっせいに耳の中へと這いずりまわってきたかのような不気味さだ。
しかし、それは決して不快というわけではなかった。
凄まじい掻痒感の中にある妖しい悦楽―--ゾクゾクするような痺れとムズ痒さが去った後には、瞬時にその不快感を愉悦に変えてしまう異様な快美さが走り立つ。

「愛璃、俺……もう我慢できそうにない」

不意に顔を上げ、神山が真剣な表情で訴えてきた。
その熱の入った眼差しに、愛璃の喉が小さく動く。

(駄目……駄目よ……流されてはいけない……わたし……啓ちゃんを裏切れない……)

戸惑いの色を浮かべている愛璃の貌に、神山がスウッと唇を寄せてくる。
愛璃は表情を固めたまま動かなかった。
いや、動けなかった。
十年越しの告白に揺れる思い、そして、肉体に残っている甘い痺れ。
それらにやんわりと理性を揉まれながら、ついに愛璃は唇を預けてしまった。

きつく重なった二人の唇。
互いにそこから相手の温もりを感じながら、重なり合った唇の動きが徐々にディープなものへと変わっていく。

チュッ、チュプ、ッチャ、クチャ―――

ときおり顔の向きを入れ替えながら、神山が丹念にふっくらとした女の唇を咥え込む。
上唇を咥えこんでは口の中で舌を這わせ、今度はすぐに下唇を咥えこんでからまた同じように舌を這わせる。
鼻から漏れている二人の吐息は何とも濃艶で、神山はもとより、もう愛璃のほうもすっかり上気しているような感じだった。

(……アア……流されちゃう……神山くん……キスが上手すぎて……と、蕩けちゃう……)

うっすらと開いた歯の隙間から、ニュルッと侵入してくる神山の舌。
愛璃は拒むどころか、さらに口を開けてその舌を受け入れた。


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