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邪愁
【痴漢/痴女 官能小説】

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邪愁(その2)-3

ベッドから降りた男は、テーブルの注射器を手にすると、針の先から小瓶の中の褐色の液体を
吸い上げていた。

鎧戸の隙間から、一匹の喋が薄暗い部屋の中に忍び込んでくる。
浅黒い肌をした男のペニスの匂いに引き寄せられるように男の下半身にまとわりつく。萎えた
ペニスの潤んだ鈴口を、蜜の巣と思ったのか羽を広げたまま留まる。


粘膜で包まれた包皮だけが、灯りの中でてらてらと光を放っていた。ペニスの芯に湧いてくる
疼きなのか、ときどき小刻みに男の陰嚢が蠢く。深く肉縁がえぐれているペニス、そしてふくよ
かな睾丸を私はつるりと呑み込んでしまいたいほど咽喉が疼きで渇ききっていた。



注射器の針が私の腕の皮膚に刺さり、褐色の液体が静脈の中を流れ始めたとき、私のからだは
自然に開いていく。男はゆっくりと私の腕に注射器で液体を注ぎ込んだあと、満足そうにその針
の先を小さな布でぬぐうと、黒いプラスチックのケースの中に戻し、褐色の液体の小瓶とともに
褪せた革袋に入れた。



血液の中に、どろりとした重い液体を感じる…胸の動悸が烈しくなり、血流の中でうねるような
疼きが私を襲ってくる…。


私の瞳がしだいに虚ろに曇り、男の姿がゆらゆらと揺れ始めると、私はすでにからだ全体を欲情
の疼きに支配されていた。縮れた漆黒の陰毛がひとりでに逆立ち、恥丘の裂け目が鮮やかな肉色
に色づいてくるのを感じる。


しだいに男の姿が幻影のように、朝の光の中で薄くなっていく…。

淡い灯りだけに照らされた部屋には、家畜小屋の豚たちの啜り泣きが、ヴァイオリンが奏でる優
雅な音楽に聞こえてくる。私の意識が遠くなり、やがて幻覚に包まれた性器だけが、烈しい快楽
を求め喘ぎ始めていた。




…ええ、電話したわ…その若い女に…泥棒猫ってね…そうよ…唾を吐きかけるようにその女に言
ってやったわ…


あのとき、夫を奪った若い女は、はっきり夫を愛していると言った…嘘だわ…ウソに決まってい
る…

鞭を打たれた若い性器で、女は夫を誘惑しているのだ…それは、私の褪せきった性器と違って、
憎々しいほど澄んだ薄桃色の性器なのだ。

若く弾けるようなその女の体に対する憎悪と羨望、そして嫉妬の息苦しい渇きが、私の中の深い
ところから咽喉元を突き上げてくる。


あの人は、ただ忘れているだけなのだ…私があの人をこんなに愛しているということを…
そう思いたかった…そう思いたい自分のすがるような心が、私の洞窟のような性器の中に虚しく
砂塵のように舞い上がる。


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