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小太郎
【家族 その他小説】

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小太郎-1

さっきから俺の前で微動だにせずただ見つめている。
きっと心配してくれてるんだ。病床に伏せたまま動けず、見舞いに来る人もいないご主人様を。
お前は健気な奴だな、小太郎。
犬である自分はおしぼりで体を拭く事もできず、お粥も作れない。だからこうして見守るのが一番の看護だと思ってるんだろうな。

小太郎は柴犬で背中の辺りが少し黒ずんでいる。
「わん!」
俺を見下ろし、寂しそうに鳴いている。心なしか、円らな瞳が潤んでいる様な気がした。
住んでいる所はペットを飼うのは許可されてはいないが、今の大家が動物好きなので特に咎められたりはしない。
もともと小太郎は野良で、通勤前や休日に近くの公園で良く会っていた。

何回か食べ物をやるうちに懐いて、一緒にいると心が癒された。
そこまでは良かったが、ある日帰宅すると玄関の前で丸まって眠りこけてて・・・
果たしてどうやって家を突き止めたのかと思ってたら、眠そうに顔を上げて

「・・・わう」

と鳴き、大きな欠伸をして歯茎を剥き出しにしていた。
遅かったな、とでも言われた様な気分だったぜ。
鍵を開けたら当然の様に家に上がり込み、以来独り身である俺の¨相棒¨となってしまったのだ。

「わんわん!」

座り込んでいた小太郎がとことことどこかへ歩いていく。
体のわりに長めな尻尾が揺れてるのが可愛らしかった。

「わん!」

・・・そして、俺の前に咥えていたものを落とした。
首輪に引っ掛けるロープ。いつも使ってるやつだな・・・

「・・・散歩行きたいって?」

恐る恐る聞いてみたら小太郎はその質問に尻尾で答えた。
ご主人様がどういう状態なのか分からないのか、お前。会社に行けないんだぞ。

「駄目だ。無理して歩いたら吐いちまいそうなんだよ」
「わんわん!」
「ご主人様をいたわってくれ。分かるよな?言いたい事」
「う〜〜〜〜〜〜〜」

分かるなら何故うなり声を出すんだ?
人間ってのは動物より強くないんだよ、分かってくれ小太郎。あまりご主人様を酷使しないでほしいな。

「わん!わん!わん!」
「お、おい、袖を噛むな、引っ張るなって!ちょっと!」

なんて力だ、人間を噛む力だけでベッドから引きずりおろそうとしてる。
分かったよ、行くよ。行けば満足か?相棒・・・

ふらつく頭を押さえながらロープを握ると、分かればよろしいとでも言う様に小太郎が鳴いた。
少しくらい歩いても大丈夫かもしれない。それに汗かけば風邪が治るかもな。
本当は行きたくないけど、以前も散歩をせがんで連れて行かなかったら布団にマーキングされた。
今日されたら芳ばしい匂いで嘔吐してしまうかもしれないし、何より替えの布団は無いからな。


玄関を開けた瞬間小太郎が飛び出して、体力の無い俺は踏ん張れず派手に転んでしまった。


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