投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

『満月の夜の分かれ道』
【元彼 官能小説】

『満月の夜の分かれ道』の最初へ 『満月の夜の分かれ道』 8 『満月の夜の分かれ道』 10 『満月の夜の分かれ道』の最後へ

『満月の夜の分かれ道』-9

―――――




「…代!千代!!」

名前を呼ばれて千代は目を開けた。眩しい光が目を刺し、一瞬何も見えなくなる。

「もう駅着くぞ」

声のした方を見上げるとそこには知秀がいた。柔らかいシートの感触と不規則な揺れを感じる。二人はまだ電車の中にいた。

(え…?今の全部…夢?)

「大丈夫か?」

呆然としている千代を知秀が心配そうに眺める。

「ほら、降りるぞ」

知秀は千代の手を取って立ち上がらた。




二人は千代の最寄りの駅で下車し、並んで歩き始めた。

「この辺あんまり変わってないな」

夢の中で聞いたのと全く同じ台詞。
それを聞いた時、何の根拠もないが千代は先程の夢が正夢であると確信した。

(右に曲がればきっと…)

分かれ道はすぐそこだ。
千代は足を踏み出すことが出来ず、その場に立ちすくんだ。

「どうした?」

知秀が怪訝な顔をして足を止める。


『どっちに行くの?』


どこからともなくそんな声が聞こえた。

どちらの道を選んだって元には戻れない。そのことだけははっきりとしていた。

(それなら…私は…)

千代は顔を上げた。

夜空には夢の中と全く同じ満月がぽっかりと浮かんでいた。


『満月の夜の分かれ道』の最初へ 『満月の夜の分かれ道』 8 『満月の夜の分かれ道』 10 『満月の夜の分かれ道』の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前