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コンビニ草紙
【理想の恋愛 恋愛小説】

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コンビニ草紙 第十七話-1

第十七話 雪ノ下祭

雪ノ下祭(ゆきのしたまつり)は、
藤本商店のある商店街の近くの雪ノ下神社の神木に咲く、
ハルユキノシタにちなんで催されるお祭りだ。
祭りと言っても、夏祭りのような賑やかさはなく、
地域活性化が目的とされたイベントのようなものだという。
しかし、歴史の長いお祭りなので、毎年上々の盛り上がりを見せるという―。

「…なぁに見てるのよ?さっきから。」

「わっ!なんだ、サヤカかぁ。驚かせないでよね。」

「さっきから此処にいたけど、リョーコったら全然気がつかないんだもん!何見
てたの?次の企画のリサーチとか?」

そうゆうとサヤカは私のPC画面に顔を近づけた。

「…ユキノシタマツリ?あんまり聞いたことないお祭りね。」

「…いや、別に何となく見てただけだから。」

サヤカは私の言葉を完全にスルーして、雪の下祭の記事の書かれている画面に釘
付けになっている。

「あ!これって、藤本さんの商店街のお祭りなの?ふーん…。」

そう言うと口元に手を置き、少し首を傾げながらサヤカは宙を見た。
彼女のいつも何か考え事をするお決まりのポーズだ。
大きな目がさらに大きくみえる。

「あ!もしかして、藤本さんに誘われた、とか?」

ちょっと面白がっている顔でサヤカはニヤニヤと私を見た。

「えっ?えーっと…。まぁ。何となく。流れで。」

上手く話す自信もないので、適当に答えた。
が、サヤカには十分な解答だったようだ。

「えー!冗談で言ったのに…。ショック〜…。リョーコが本命かぁ…。どうりで
何か素っ気ない訳だぁ…。」

「本命って…。サヤカ、結構本気だったの?」

「…うーん。微妙に本気だった。」

「なにそれ。」

サヤカのぶーたれた顔が可愛くてつい笑ってしまった。

「だってさー藤本さんって本当格好いいし、不思議な雰囲気で謎めいてる感じで
魅力もあるって言うか…。超ド級アナログ人間だけど、彼なら許されるっていう
か…。」

確かにサヤカの言う通りだと思う。普通なら呆気にとられる事も、彼なら納得し
てしまう。一緒に居て、厭味もなく驕りもない。本当に不思議な人物だと思う。

「…ちょっと残念だけど、リョーコなら藤本さんとお似合いかも。リョーコ結構
物事に無頓着なところあるし。」

「なによ、無頓着って。失礼ね。」

私がちょっとむくれるとサヤカがカラカラと笑った。


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