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思い出す

憧れるあの選手はその時どんな速さでどんな強さでボールを蹴り,キーパを振り切り,ネットを揺らしたのか

鮮明に蘇る生で見た興奮

果たしてあたしにあんな凄いシュートが打てるのか

分からない

でも

一回は死んだ身だ

自分を捨てた

でも今,あたしは確かに生きてる

だから

一回自分を信じてみよう


「あれ〜なかなか打たないよ夏希先輩,どうしたんだろ〜??」

「せっかく夏先輩希のプレー見に来たのにねえ〜」

「おい!!早く蹴ろよ!!」


「はい・・」

数歩下がり,助走する

(!?なんだろ・・体が凄く軽い・・・それにこんなスピード出たことない・・これならいけるかもしれないっ・・・!)

スパイクがボールに触れる
きれいなフォームのイメージが出来る

その瞬間,キーパがとっさに右へ動くのが見えた

(よし・・!左に思いっきりシュートだ・・)

見事なカーブを描いてボールがゴールへと吸い込まれていく




「きゃーーーーーーーーーっ!!!夏希先輩凄い!!」

「あの森田先輩からゴール奪っちゃうなんて!!かっこよすぎる〜!!」

(うそっ・・・・本当に入っちゃった・・)

茫然していると目の前にはガックリと落ち込んでいる森田先輩と,ゴールネットの中にあるボールがシュートを決めた完全な証拠があった

マネージャーがすかさず駆け寄る                  「さすがじゃない夏希君!!こりゃあ今年は去年以上に期待できるね!!・・でも森田先輩は酷く沈んでるね〜そりゃあ今まで夏希君を防げてたからね・・・ちょっと可哀相かも」

(もしかして・・あたしって結構凄いことしちゃったのかな・・?)

「あのっ・・夏希先輩〜!!今のシュートすんごく格好良かったです!!」

後輩の女の子が夏希を囲みはじめた

「へっ・・?あっありがとう・・・」

ぎこちなく笑顔を頑張って作ると,女の子達から歓声が上がる

(不思議・・・あたしが女の子だった頃なんか,誰とも喋れないでずっと下を向いてばかりだったのに・・今は色んな人から話し掛けられて,話して,喜ばれてるなんて・・・本当に信じられないよ・・知らなかったな・・・こんなにも人と触れ合うって楽しい事なんだ・・・)

思わず夏希の顔から笑顔が零れる

(男の夏希として・・・新たに生まれ変わろう・・たくさん笑ってもう死にたいなんて思わない人生を歩んで行きたいな・・・)

そう思い,サッカーボールを優しい眼差しで見つめた


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