『滝くんの秘密』-3
待ち合わせ場所にいくと滝くんはすでにそこに立っていた。
いつも制服だから私服が新鮮だ。ショート丈のグレーのダッフルコートが似合っていてかわいい。
「ごめん！待った？」
「いや、時間通りだよ。じゃあいこうか」
私達はバスに乗り、滝くんの家に向かった。
「佐々山さん」
「何？」
「今日かわいい」
「！！」
滝くんはそれだけいうとぷいと窓の方を向いた。顔は見えなくても耳が真っ赤になっているのでバレバレだ。
「あ、ありがとう」
私も思わず赤くなる。
「そ、そうだ。滝くんのお父さんってどんな人なの？」
滝くんにはお母さんがいない。小学生のころに離婚して家を出て行ってしまったそうだ。そのため滝くんは料理もすごく上手い。この前家に来た時も私の母が料理するのを手伝って鮮やかな包丁さばきを見せ、私はずいぶん肩身の狭い思いをしたのだった。
「今日は家にいないよ」
「えっ？お仕事なの？」
「うん」
「なんのお仕事してるの？」
私がそう聞くと滝くんは沈黙し、
「…秘密」
とだけ答えた。気になったけど滝くんが答えたくなさそうだったので、それ以上は追及しないことにした。
しばらくしてバスが目的地に停まり、私達はバスを降りた。
滝くんについて歩いて行くと大きなマンションにたどり着いた。
「もしかして…ここ？」
「そうだよ」
滝くんは慣れた様子でエントランスに入っていく。普通の一軒家に住んでいる私は大理石の床や革張りのソファーをしげしげと眺めていた。
滝くんがエントランスの真ん中に置かれた機械に鍵を突っ込んで回すとドアが開き、私達はエレベーターに乗り込んだ。
エレベーターはすごいスピードでぐんぐん上がって行き、目指す階についた。
「どうぞ。上がって」
「お、おじゃましま〜す…」
ふかふかのスリッパをはいた私はリビングに通された。
「うわ！広〜い！」
そこはまるでテレビに出て来るお金持ちのお家だった。壁も天井も真っ白で床はピカピカのフローリング。高そうなアンティークっぽい家具に絵画…。大きな窓からはミニカーが見える。
「二人で住んでるのに無駄に広いから掃除が大変なんだ。俺の部屋こっちだよ」
呆気にとられている私の手を引いて滝くんは自室のドアを開ける。