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海螢
【SM 官能小説】

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海螢(芙美子の場合)-4

あうっー…


縛られた母は、苦痛とも快感ともつかないような嗚咽と悲鳴をあげていた。
母のもつ女の熟れた性の匂いと男の甘い精液の臭いが交じり合いながら、噎せるようにその部屋
に漂っていた。


…もっと…もっと欲しいわ…

耳を塞ぎたくなるような母の喘ぎ声だった。あの頃四十八歳だった母の熟れきった肌が、湿った
陰壺から滲みでる蜜汁で潤され、性の悦びに充たされた嗚咽が母の唇から洩れていた。




昼休みに区役所の資料部屋の窓から眺める青い空が、街の向こうの遠い海へと拡がっていた。
ふとあの写真に目を向ける。淡い暗闇の水の中には、透明な背甲で覆われた小さな粒のような姿
をしたウミホタルがゆっくりと揺らいでいた。昼間は海底の砂中で生活し、夜になると浮遊する
という。

芙美子の中にあのとき見た男のペニスだけが、自分の中に疼くように漂ってくる。
充たされない体の中で、ウミホタルの輝きが、とらえどころのない性の疼きとともに浮遊し始め
ているような気がした。



あの時見た男の下半身にぬらぬらと屹立した黒々としたペニス… 忘れられなかった。 


下着を剥がれ、後ろ手に縛られ、おぞましい姿で男のものを受け入れた母の姿…。縛られた乳房
を貪ぼる男の背中…そして、母の白い腿のあいだに埋まった男の引き締まった臀部が揺れていた。


喘ぐ母の性器を裂いた男のペニスは、きっと生き物のように母の陰部の中で蠢いていたのだ。
激しく男の背中と腰が蠕動を繰り返し、男の腰の動きが一瞬止まったとき、放出された精液が母
の白い内腿を流れていた。

顔のわからない男…彼の締まった臀部には、小さな特徴のある三つのホクロが目に留まったのを
憶えている。



あのころから、母の化粧が濃くなったような気がする。芙美子が家にいないあいだに、男に縛ら
れて嬌声をあげている母がずっと不潔だと思い続けていた。
あのことを母に問い詰めることもなく、倒れた母は記憶を失ったように言葉を失い、長い入院生
活のまま逝ってしまった。


でも…母の入院中に匿名で毎月かかさず送られてくる赤い薔薇…それが一体だれからの花なのか
芙美子は、ずっと思い続けていた…母を縛った男なの…別の恋人がいたのかしら…いや、きっと
母の女友達かもしれない…



あの光景が瞳の中に刻み込まれて以来、ずっと自分の中のすべてをあの光景の中のペニスが呪縛
していた…心も体も…そして自分の性器の中さえ、まるで氷のようにあのペニスが睨み続けてい
るような気がしている。


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