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彼女は彼女の彼女
【同性愛♀ 官能小説】

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彼女は彼女の彼女-2

『嘘、だろ』
愕然とした。
頭の中が真っ白になって、全身からさっと血の気が引くのを感じた。
『佐東……さん』
目の前に立つ彼女は紛れもなく級友の汐見小百合の姿。
そして彼女は、今までにチカが見たことのない表情と口調でこう言ったのだった。
『へえ、佐東さん"も"なんだ』

佐東チカが女を恋愛の対象として意識し始めたのはいつからだったか。
ただ、男と付き合ってもセックスをしても違和感を感じていたのは確かだった。兄の悪い友人達と酒盛りをした時、兄の彼女から冗談半分で胸を揉まれた時、驚くほど感じたことも確かで。
柔らかな唇にキスしてみたい。細い繊細な指で自分の身体を蹂躙してほしい、そういった欲望を抱くようになっていた。
そんなチカが同性愛者向けの出会い系サイトに登録したのも、流れとしてはごく自然なことだといえる。
しかし――

『いつから? 彼女いたことないって言ってたよね? ネコなんだっけ?』
『……うるせぇよ』
喫茶店に入り、アイスコーヒーを啜る二人。会話は一方的に小百合からで、チカは動揺を隠すかように無口で無愛想になっていた。
『何でてめぇは学校と違うんだよ』
小百合からの質問には答えず、チカは相変わらず顔を顰めて言った。
普段の汐見小百合といえば、ろくに級友とも喋らず、流行や男にはまったく興味がないといった様子で、休み時間には本を読んでいるばかりの地味な生徒だ。
話しかければぼそぼそと何を言っているのか聞きとれず、級友ばかりか教師まで彼女から距離を置いていた。
それが今はどうだろう。銀フレームの眼鏡はそのままだが、下ろした髪と小奇麗なワンピース姿はいつもの彼女とは全く違った印象だ。おまけに彼女の話し方は恋愛経験豊富そうな大人の女を思わせた。
小百合は肩を竦めて訊き返す。
『どっちが本当のわたしだと思う?』
口ごもるチカを前に、小百合は僅かに首を傾げながら答えた。
『興味ない人間には用ないから。人を遠ざけるには、"学校の姿"が一番楽』
『……驚いた』
『こっちこそ』
ぼそりと呟いたチカの言葉に、小百合が笑いながら言う。
『不良で有名な佐東さんがまさか、ね』
言って、小百合は携帯を開いた。素早くキーを弄ってから、表示された画面をチカに見せる。

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From : ちかさん
Subject : Re:きっかけ
きっかけか分かんないけど
兄貴の彼女に触られた時
かなぁ。。めちゃめちゃ感じ
ちゃって;
ユリさんは??
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『っ!』
自分のメールを晒されて、思わず小百合の携帯を引っ手繰るチカ。
真っ赤になって今にも泣き出しそうなその表情を、小百合はどこか嗜虐的な目で見つめていた。
『可愛い』
『黙れよ』
小百合を睨みつけたままチカは吐き捨てるように言った。
『分かってると思うけど、このことをバラしたらただじゃおかないかな』
『ただじゃおかないって? どうしようかな』
くすりと笑う小百合の意地悪い言葉に、チカはかっとなった。
『――帰る』
ぶっきらぼうに言い、半分以上もアイスコーヒーを残したまま立ち上がる。
からん、と溶けた氷がグラスの中で音を奏でた。
『待って』
踵を返すチカの腕を小百合が引き留めるように掴む。
『冗談。誰にも言うわけないでしょう』
だからね、と小百合はチカの耳元に唇を寄せた。
『ホテル、行こ』


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