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海螢
【SM 官能小説】

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海螢(久美子の場合)-5

マンションの窓から、暗闇に散りばめられた街の灯りをぼんやりと眺めつづける。雪の粒が微か
に混じった冷たい夜風が、お酒の酔いで少し火照った頬をひんやりと撫で上げる。


ふと、あの男の黒い鞄の中が思い浮かぶ。ずっと気になっていた…。



男が印鑑を取り出すときに見えたもの…それは無造作に入っていた黒い縄の束と赤い蝋燭だった。
久美子が何気なくその鞄の中に視線を向けたことに、男は気がついたのだろうか…。



…そんなことをあの男は、ほんとにやっているのかしら…

久美子の胸の内で、何かの予感が響き合い、やがてその響きは、ほのかな肉欲を誘うように子宮
の中をくすぐり始めていた。



あの男の夢を見た…。


後ろ手に縛られた女が、太腿の付け根を裂かれ、悩ましい陰毛で覆われた性器を男の指でなぞら
れていた。妖しく蠢く指で掻き分けられ、押し広げられる蜜色に濡れた秘肉…男は縛った女の性
器から汁を吸い上げるように、粘りのある愛撫を続けている。

その海藻のような淫毛を舌に絡めながら、秘裂の翳りをなぞり、ゆっくりとその舌先で蜜の溢れ
た花弁の中を啄む。

縛られた女は嗚咽を洩らし、歯を噛み鳴らしながら、男のものを欲しがっている。その欲しがる
女の体の上に赤い蝋燭がかざされる。
溶けた熱蝋が、男の笑みに包まれながらとろりと滴る。その瞬間、縛られた乳房がぶるりと揺れ、
女は愉悦に充ちたかすかな悲鳴をあげ、体をのけ反らせた。

女の唇が小刻みに震える。そして舌を伸びきらせ、白い咽喉を鳴らしながら欲しがっていたのは、
ぬらぬらと光沢を放つ男の太いペ○スだった。



女は、久美子自身だった…。



眩暈のするような悪夢にうなされながら、烈しい咽喉の渇きを感じたとき、久美子は目を覚まし
た。経験したことのないような蜜液で下着がぐっしょりと濡れていた。

そのとき枕元の携帯電話が点滅しながら鳴りはじめた。



…久美ちゃん、見てくれたの…お見合いの相手さんの写真…もう、そういう歳なんだから、いろ
いろ贅沢言わないのよ…相手さんは四十歳だけど、会社もしっかりしたところだし…ほら、あな
たの実家の隣のユミちゃんなんて、もう赤ちゃんができたって…


電話の先で、いつものかん高い叔母の声が遠くなっていく。やがて何も聞こえなくなる。久美子
は、澄みきった冬の夜空が広がる窓の外をぼんやりと眺めていた。


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