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『Summer Night's Dream』
【青春 恋愛小説】

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『Summer Night's Dream』その5-1

翌日朝七時にインターフォンが鳴った。
どうせ新聞のセールスか何かだろう。起きかけた瞼を再び閉じ二度寝を決め込むと、続けざまに十回くらいピンポンが鳴った。それでも動かずにいたら今度は携帯が鳴き始めた。
着信履歴を確かめると部長の名前があった。
そこで陽介は昨日の内にあったことを全て報告することを約束していたことに気付いた。

つまりは、そういうことらしい。

陽介はジャージ姿のまま玄関のドアを開いた。
洗い立てのような白いシャツに身を包んだ部長と、陽介と同じ学校指定のジャージを着た孝文が死んだ魚のような目をしていた。


「上がるぞ」


挨拶もそこそこに、水嶋は孝文の首根っこを掴んで入ってきた。どうやら、コイツも朝早くに部長に叩き起こされてきたクチのようだ。休日のこの時間に起きるというサイクルは、陽介達の常識にはない。


「情けないことを言うな。俺は毎朝5時起きでランニングをしてから、学校に行く。お前らもそのくらいやってみせろ」


文化系クラブとは思えない発言だった。陽介は部屋に戻って適当に物を片してから、2人を招き入れた。椅子にふんぞり返った水嶋が、膝を組んで落ち着いた声で言った。


「昨夜は、ご苦労だったな」


「いえ」


「本来なら俺もついていってやりたかったのだが。悪かった」


微塵も悪気がなさそうに謝ってもらっても困るのだが。怒る気は失せて呆れてしまう。営業とかには絶対向かないタイプだ。


「じゃあ早速だが、聞かせてくれ」


「そいつは起こさないんですか?」


人ん家のベッドで舟をこいでいる孝文を指して言った。


「…ああ、ほっといてかまわないだろう」


いや、それはだいぶ困る。シーツに変な毛でも付いたらどうしてくれるのだ。そもそもどうして連れてきたのだ。居ても居なくても変わらんだろうが、コイツは。


「居ても居なくてもいいのなら……」


と水嶋が言った。


「居ればいいじゃないか」


……まあ、確かに。
ど直球の正論を言われ返す言葉もなく、陽介は、昨夜の出来事を簡単に説明した。
資料室で偶然撮った写真に、謎の光が写っていた事。
その場所を調べた所に押し花が挟まっていて、その花言葉をさくらが知っていた事。

そして、陽介にも何者かの言葉が聴こえた、事だけは今は言わずにおいた。
たぶん、自分でもまだ信じられないからだと思う。いまだにアレは幻聴だったのではないだろうか。何かの聞き間違いのような気もするし、それにしてはやたらリアルな幻聴だ。
つまり、陽介自身が半信半疑な状態だった。
はっきりと確信が持てるまでは、胸の内に留めておくことにした。


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