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脅迫文=恋文?
【コメディ 恋愛小説】

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『白雪=完璧?』-2

2 遅い……。五時は十分前に過ぎた。
舞姫神社の前で俺は待ち惚け。
年に一回の舞姫祭だから、結構人が多くなってきたな。
舞姫ってのは、この町、舞阪町に伝わる伝説に登場する御姫様の事だ。
何でも、昔…土地の神様が暴れて、近くの荒舞川が氾濫を起こしかけた時に舞姫が舞を舞って神様を鎮めた事に由来するらしい……と昔、ばあちゃんに聞いたことがある。
だから、この辺りの地名には『舞』の字が多いらしい。
それにしても遅い……。
「ケ〜ン♪」
「どわっ!?し、白雪!脅かす、な………」
いきなり後ろから白雪が抱きついてきた。って…………綺麗だ。
「ビビんなよ、このぐらいで。それより、どうだ?似合うか?」
……………。
「お〜い……憲?」
「あ……おぉ、に、似合ってる」
「へへ、サンキュ」
薄紫の浴衣を着た白雪が俺の前にいる。
いつもは長くておろしてる、綺麗な髪は上手にまとめてある。い、色っぽい……。
「憲も似合ってるな」
「そうか?」
俺の浴衣は紺色だ。ついでに下駄もセット。
「あぁ!……じゃあ、おごってもらおうかな!ふふっ、いか焼きに林檎あめ、焼きそばも捨てがたいなぁ」
「食い物ばっかじゃねぇか」
「良いじゃん!ほらほら、行こ!!」
「わっ!?ひ、引っ張るな、下駄で歩きにくいんだから!」
俺達は、祭りの喧騒に入っていった。


「ほらぁ、口開けな!」
「よ、よせよっ。自分で食える!」
白雪がたこ焼きを俺の口元に運んでくる。男なら、大抵誰もが一度は憧れるだろうが流石に恥ずかしすぎる。
「なんだよぅ、じゃあ良いよ。アタシが全部食うから!」
「あぁ!!」
全部食われた……。
「……ふぅ、じゃあ次は焼きそば!!」
「まだ食うのか?林檎あめ、フランクフルトにたこ焼きとずいぶん食ったのに……」
只でさえ、物価が高い出店だってのに………。
食べ物だけで、俺の財布の住人は樋口一葉から二人の野口英世と一番デかい硬貨に変化した……。
それにしても……白雪、やっぱ綺麗だな。お約束だけど。
こんな美人が俺の彼女ってのは、やっぱり恵まれてる……恵まれ過ぎてる。
白雪は、度々俺に嫌われるかも、と不安にかられるらしい。けど、俺だって正直不安だ。いつも、俺は白雪にふさわしくないんじゃないかって思う。
何をやっても完璧な白雪と、ほとんど平均的な俺じゃあ釣り合いが取れる筈もない。
それを話した時、相談にのってくれた独はこう言ってくれた。
『あの矢城が自分からお前に告白したんだぞ?もっと自信持てよ。あんな笑顔の矢城、見れる様になったのはお前と付き合い出してからだ。大丈夫、お前らはお似合いだよ。』
でも、たまに耳にする俺と白雪の話は、大体俺が白雪と付き合うことへの不平不満だ。
俺が悪く言われるのは、別に構わない。ただ、白雪が悪く言われるのは辛い。俺のせいで……。
「……何を暗い顔してるんだよ?」
「……なぁ、白雪。俺と付き合ってよかったか?」
「……え?な、なに言い出すんだよ……?」
白雪の顔が曇ったのが解る。
「わ、別れるとか、言うなよ……?」
「そうじゃない、そうじゃないんだ。たださ、何やっても完璧、そんなお前が俺みたいなのと付き合っても……よかったのかな、って思ってさ」
俺はうつむきながらそう言った。……俺は馬鹿だ。こんな事言っても、白雪を不安にするだけだってのに……。
「……なぁんだ。そんな事か」
……………へ?
「そんな事か、って」
「アタシだけじゃなかったんだな、不安だったの。安心した!」
白雪は笑顔のまま歩き出す。ちょっと遅れて、俺は後を追った。
「アタシは完璧じゃないよ、憲。憲がいなくなる、って思っただけで、アタシはもう駄目だ。憲がいなきゃ駄目なんだよ」
「白雪……」
「アタシはね、何をするにも、少なからず不安があるよ。誰だって、何かを不安に思ってる。だけど、アタシは憲が側にいるだけで、何でもできるって気持ちになれるんだよ。憲が……大好きだからさ」
…………やっぱり馬鹿だ。白雪がここまで俺を想ってくれてるのに気付きもしないで、あんな事言って……。
「まぁ、当面の一番の不安は憲に嫌われるかもしれない事だけどね」
苦笑いしながら、白雪は振り向いた。
「……それは要らない不安だな。俺がお前を嫌う事は、多分無いぞ」
「アタシだってね、憲の事をずっと好きでいる自信がある。これが今、一番自信のあることさ!」
……白雪と出会えて良かった。俺は、心の底からそう思った。思わずにはいられなかった。
「……さぁて、焼きそばおごってもらうぞ!」
「あぁ。でも、あんまり食うと太るぞ」
「太っても好きでいてくれるんだろ?」
………太った白雪。想像は出来ないが、あまり良い印象がない。やっぱ、白雪は今のままが一番だ。手を打って置こう。
「さぁな」
「………半分こしよう」
すまん白雪。我が儘かもしれんが、やっぱりお前は細い方が良い。


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