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長い夜
【大人 恋愛小説】

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長い夜(二)-5

「本日はお忙しい中、ありがとうございました」

遼子はしかたなく横岩にビールを注ぐ。

「いやー、待ってたよー。ほら、君も飲んで、飲んで。」

「いえ、私は・・」 営業スマイルで柔らかく断わりつつ下がろうとした遼子のひざに、横岩は手元が狂ったかというようにビールをこぼした。

「あ・・・」 遼子が濡れたスカートを拭くのにハンカチを探していると、横岩がお絞りで遼子のひざを乱暴に拭こうとした。

「ああ、すまんすまん。こぼしてしまった」 にやけた顔で遼子の足に触ろうとしている。

「いえ、大丈夫ですから。」

そう言いながら、逃げようとする遼子の腕を掴んで離さない。

「わざとじゃないんだから、ほら、濡れちゃってるよ」

スカートをごしごしと擦るふりをして捲り上げようとする横岩の顔はにやけたままだ。



「横岩さんじゃないですか、お久しぶりですね」

その声に顔を向けた横岩は、遼子の腕を放して、姿勢を整えた。

「おや、これは、西中さんとこの佐伯部長。帰ってらしたんですか?今回もお目にかからなかったんで、またあっちの方かと・・」

あっちがどっちだか分かってもいない。ただ、海外出張も多いことを耳にしていただけだ。

「ええ、タイからは先週帰っていたのですが、今日の展示会には参加できませんでした」

横岩にそう返事しながらも、佐伯はそっと遼子を促して席を立たせた。

遼子はすぐに洗面所に入っていった。

鏡に映る自分を見つめながら、心臓の鼓動がおさまらない。

だがそれは、横岩のセクハラに対しての恐怖感ではなさそうだ。

「佐伯さん・・」小さく声にだして名前を読んでみた。さらに鼓動が高鳴る。

「りんちゃん、だいじょうぶ?」

ママが心配そうに声をかけた。

遼子はスカートを拭きながら、ドアを開けた。

「大丈夫です・・・けど、シミになっちゃうかな・・」

遼子はスカートのことを心配しているふりをした。

「ごめんね、助けに行こうと思ったら、佐伯さんが先に立ち上がっちゃってて・・でも、良かったわね。佐伯さんの方が私より効き目あるわ」

ママが微笑みかけた。

「ママ・・佐伯さん、いつからいらしてたんですか」

遼子は食い入るような瞳で聞き返した。


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