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胎児の遺言
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胎児の遺言-13

∞∞∞


森脇さんは、私の話を黙って全部聞いたあと、私の体をとても心配してくれた。


森脇さんに、何かして貰おうと思った訳ではなかった。


今はただ、私の話に耳を傾けてくれる人が居るだけで、いくらか救われた気持ちになった。


森脇さんは1枚の名刺を取り出し、裏にプライベートの携帯番号を書き込むと、「何かあったら電話しろ!」と、私に手渡してくれた。


私も森脇さんに連絡先を教え、その夜は別れた。


――――――――――――

結果的に、ひと月後森脇さんは私に電話をくれた。


「ずっとお前のこと気になっててな…」


その時は、もう全てが終わったあとだったから…


『うん…今はもう大丈夫だから…』


…って笑顔で言えた。


「そんならいいけどさ。もう無茶はすんなよ!」


それだけ言うと、彼は電話を切った。


たまたま旅先で知り合った人ですら、こんなに優しいのに、現実はうまくいかない。

――――――――――――

そのあと、貴幸に電話を入れたけど、やっぱりつながらなくて、気分は落ち込む一方だった。


爽やかな夏の夜風が、優しく私の髪を揺らし、頬を伝った涙を乾かしてくれた。


∞∞∞


日常に戻った私は、結局自分の力ではどうにもならなくて、母親に泣き付いた。


母親には、1番借りを作りたくなかったのに…


私が事情を話した時の母親との会話は、一語一句今でも鮮明に覚えているけど、ここでは触れたくない。


その夜、私が見ている前で、母親から父親に事情が話された。


父親は私の顔を見ることもせず、ただただ押し黙ったままだった。


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