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由紀ちゃんと僕
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由紀ちゃんと僕-1

深夜の着信。こんな時間にかけてくる相手は1人しかいない
僕は半ば眠りかけた頭で着信ボタンを押す。繋がった途端の泣きそうな声

『あたしの何が悪いのよ!』

『‥‥うん』

覚醒しない頭でなるべく理解のあるように僕は頷く。

―由季ちゃんだった。

電話の向こうのお人形さんみたいな白い肌と長い睫を思い出す。

由紀ちゃんは僕の彼女とかではない。ただの友達。

いつもうまくいかなくなると僕に電話を掛けてくる。それは大体深夜のこれ位の時間が多かった

『‥由紀ちゃんは』

寝起きで喋ると噛みそうになるので一呼吸置く

『由紀ちゃんは何も悪くないよ』

それが由紀ちゃんの欲しいコトバ。他のどのコトバも欲しくない。ただ優しく【悪くないよ】と言って欲しいのだ。

『‥うん』

電話の向こうで由紀ちゃんは、しゃくりあげる。由紀ちゃんの心の天気は今、大嵐みたいだ。僕は短い毎回少しずつ違った合いの手を入れながら聞く

由紀ちゃんは感受性が強くて敏感で すぐに何もかもが悲しくなってしまうのだ。

『ありがとう、智樹』

言いたい事の全てを言い終えたみたいだ。声のトーンが明るく弾んでいる。

由紀ちゃんは、こんな時だけ甘く僕の下の名前を呼ぶ。

女の子ってズルい、と思う。僕は『うん』と優しく返して由紀ちゃんが電話を切るのを待つ。

電話が切れた後の、ツー、ツーって音が苦手なの。と由紀ちゃんが以前言ったからだ

僕は しばらく待ってその音を聞いた後 ゆっくりと携帯をとじた

携帯を持っていた手が冷えている。

僕は携帯の液晶窓で時間を確認した。5時ちょっと前。

電話を取ったのが確か3時過ぎ。途中時計は確認しなかったが随分時間が経っていたようだ

そういえば 明後日提出のレポートが終わっていない。今やってしまおうか

僕は体を起こした。カーテンを開けるがまだ暗い。身支度を整えながら 電子レンジで牛乳を温める

オレンジの光の中でクルクル回る牛乳を見ながら ため息。

―お人好し

昔からそうだ。だけど 少しでも由紀ちゃんの心が この牛乳みたいに、ほわほわとあたたまってくれたらいい と本気で願ってしまう。

優しい、のが唯一の取り柄。

ホットミルクを取り出し ゆっくりと口に含む。

出窓に赤い光が見える。日の出だ

日の出の赤を見ていたらエネルギーがみなぎってきた気がする。今日はいい1日だ。

レポートはやめて散歩に行こう


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