投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

改:愛・地獄変 〜地獄への招待〜
【鬼畜 官能小説】

改:愛・地獄変 〜地獄への招待〜の最初へ 改:愛・地獄変 〜地獄への招待〜 4 改:愛・地獄変 〜地獄への招待〜 6 改:愛・地獄変 〜地獄への招待〜の最後へ

改:愛・地獄変 〜地獄への招待〜-5

(諍い)

 娘が十六の時でございました。
酒の酔いも手伝って、妻に手をあげてしまいました。些細なことからの口喧嘩の末のことでございました。生まれてこの方、そのような経験の無い妻にとっては、ショックでございましたでしょう。眼をカッと見開いて、口をパクパクさせて・・・。
 ククク、まるで陸に上がった魚でございました。思わず、噴出してしまいました。と、怒ること怒ること。怒髪天を突く、勢いでございました。
“俺を虚仮にして!あの男の娘なんだろうが!”
心の内で、叫んでおりました。

えっ、
「どうして実の娘ではないと分かったのか?」ですと。お話ししていませんでしたか、失礼いたしました。親の口から申すのも何でございますが、実に頭のいい子でして、常に学年トップの成績でございました。器量も、私に似ず評判の娘でございます。お分かりでしょうか?私とは似ても似つかぬ娘なのでございます。
 まぁ確かに、妻に似てはおります。大きな目と鼻筋が通った鼻、そしてぷっくりとした少し肉厚の唇。顔の輪郭は、まぁ面長の部類に入りますでしょうな。うーん、お分かりいただけませんか?困りましたなぁ、どうご説明すればいいか・・。

映画スターで言えば・・うん!松坂慶子に似ておりますですよ。「夜の診察室」なんぞは、初々しい色気がありますな。ハハハ、羨ましいですかな?ただ、お店の近くに住んでおられた大木様のお話では、あの同棲相手の男の面影があるとのこと。
 そう考えれば、全く納得のいくことでございましょう。全く不釣り合いの私のような者に嫁ぐなどということが。娘のおらぬ所で、そのことを詰りましたのが、このお話の、ある意味では発端でございます。勿論、妻は否定いたします。しかし、否定されればされるほど疑念の心は確信に変わっていったのでございます。そして嫁ぐことを決意した理由が、
「恩返しのつもりだった」と聞かされた折りには、”やはり”という気持ちで一杯でした。

 そうでございましょう?恩返しなどとお為ごかしなことを、いけしゃあしゃあと言うのでございますから。ご奉公中の私めに対する態度を思いますれば、とてものことに信じられぬ言葉ででごさいます。あれ程に背に負ぶってあやし申し上げた私に対して、
「お前の背は臭かったわ!」などと、女学校のご級友の前での罵詈雑言。聞かれたご級友の、かばい立てがなかったら・・。
 そして又、何ゆえに手までお上げになられるのか。しかもお手ではなく、さも汚らわしいものに触れでもされるように、箒を持ち出してのこと。忘れてはいませんぞ。
「正夫さん、本心からではないのですよ。あの年頃というのはね、心持ちとは逆のことをくちにしたりするものですよ。」

大木さまからの優しいお声かけがありましても、俄かには信じがたいことでございます。あの蔑みの目は、私の脳裏から未だに消えておりません。うっすらと浮かんでいた涙とて、そこまでお嫌いなのかと情けなくさえ思えたものでございます。
 結果、私たち夫婦の家庭内別居が始まったのでございます。食事の支度こそしてくれますが、私一人のわびしい食卓でした。以前も確かにひとり食事ではございましたが、あれこれと世話を焼いてくれておりましたのに。確かに、朝を一時間ほど早めは致しましたが。膨れっ面など、見たくもありませんですから。
それに顔を見るとつい
「あの男が、今でも忘れられないだろうが。」等々、口に出してしまいます。当初こそ否定していた妻ですが、程なく口を利かなくなりました。認めたも同然でございます。いえ実は、認めたのでございますよ、はい。
「はいはい。そういうことにしておいてくださいな、馬鹿々々しい。」

 店の手伝いでごさいますか?えぇまぁ、表で頑張ってはおります。いつものようにお客さまに愛想を振りまいておりますです。裏で仕込みを続ける私のもとにまで聞こえてまいります。わざと大声を張り上げているのでございますよ。確かに、以前も大声でした。その明るい声に、私の疲れも吹き飛ぶというものです。世間話の上手い妻でございまして、良くお客さまを笑わせております。
 その笑い声は、お客さまに安心感を与えますようです。
「奥さんと話していると、浮世の憂さがぱあーっとどこかに行ってしまうわ。」
そんなお言葉を、ちょくちょく頂いております。


改:愛・地獄変 〜地獄への招待〜の最初へ 改:愛・地獄変 〜地獄への招待〜 4 改:愛・地獄変 〜地獄への招待〜 6 改:愛・地獄変 〜地獄への招待〜の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前