僕とあたしの海辺の事件慕 プロローグ「夏の日の午後」-2
――うふふ、くすぐったいよ……。
おへそ周りをさすられると腰が自然と退けてしまい、身体で「く」の字を成す。
――真琴ってばスケベ。あたしといるといっつもはあはあ言ってさ、発情期のサルみたい。
下腹部をさらに滑り、水玉模様のショーツに忍び込む。
――ばかあ、どうして触りたがるの? そこオシッコするところだよ?
包皮に守られた肉芽がすすっと擦られる事数回。
「ん、んくぅ、や、だめぇ……」
肥大するクリトリスは包皮から顔を出そうと必死になる。
「あんあんあんっ! やっ、はぁ! だ、だめ、声、でちゃうううう!」
腰が浮き、股間を天井に捧げるように突き上げる仕草はブリッジの出来損ない。当人は必死に高見を目指すが、存在しない彼ではその頂も低い。
「はぁはぁ……ん、んぅ」
ショーツから片足を抜き、女になったばかりの花弁を開く。
クチュリといやらしい水音に「むぅ」と眉を顰め、枕元にあるウェットティッシュで指先を拭く。
そして……、
「真琴がいけないんだからね、アタシとエッチしちゃったから……」
既知の快楽にたどり着こうと、指をアイツに見立て探索させる。まずは秘境の入り口、ヴァギナから……。
ブー、ブー、ブー……。
突然の振動音に探索どころか現実へ戻る澪。机の上で充電器に繋がっている携帯がきらびやかに着信を知らせてくれる。
――もう、誰よ……。
携帯を取るとメールが届いていた。
件名は「ただいま」。
相手は真澄梓。
澪が真琴と会いづらい理由の一つだった。
**――**
「おそーい、アタシを待たせるな!」
通りの向こう側を急ぐ幼馴染を見つけた澪は両手を挙げて「怒っているんだぞ」とアピールする。
待ち合わせの時刻は一時二十分。時計もやはり二十分。しかし、これでは男女のデートとして五分以上のマナー違反。
「ゴメン、澪」
とはいえ、彼が電話を受けたのはつい五分前。マナーを守るのはどだい無理な話なのだ。
「もう、待たせたんだからジュースおごりね?」
「わかったよ」
真琴は愚痴一つなく近くの自販機に買いに走ると、レモンスカッシュ片手に戻ってくる。
結露した水滴がいかにも涼しげなそれを奪うと、澪は礼も言わずにふたを開ける。
「……ん、んぐんぐんぐ……はぁ……!」
甘さと酸っぱさ、炭酸の喉越しをびしびしと感じながら一息つく澪。目の前の健気な彼氏未満はニコニコしながら何かを待っている。その様子はどこか主人の合図を待つ犬のよう。