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脅迫文=恋文?
【コメディ 恋愛小説】

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思い出=とても大切なもの-4

4 白雪の家に着いたのは学校を出て五分後だった。いつもなら十五分はかかるけど。
急いでインターフォンを鳴らす。
「はい」
孝之が出た。今日は白雪を一人にするわけにはいかないと学校を休んでいた。
「孝之、憲だ!!入れてくれ!!」
「憲?……学校はどうしたんだ?」
「そんな事はどうでもいい。白雪に会わせてくれ!!!」
「わ、わかった」
門の鍵が開いた。急いで中に入り、チャリをそこらに転がして庭を駆け抜ける。
ドアを開くと孝之が立っていた。
「どうしたんだよ?」
「全部思い出した!!」
「……え?」
詳しい説明する時間も惜しい。今は一刻も早く白雪に会いたい。
孝之を残して、正面階段を駆け上がる。白雪の部屋は左の一番奥だ。
流石に、前まで来ると緊張し始めた。あんな事が無ければ、緊張せずにノックできるんだが。だけど、だからと言って、しない訳には絶対いかない。
意を決して、俺はドアをノックした。
「……孝之?」
弱々しい声が……中から聞こえた。罪悪感が俺を支配し始める。
「俺だよ。憲だ」
見えないが、白雪が緊張したのがわかる。場の雰囲気が変わったのだ。
「……話をしに来た。そのままでいいから、聞いてくれないか?」
白雪は無言。一応、了解ととる。
「まず、謝らせてくれ。ごめんなさい。……それと昨日の事だけど…俺は、白雪と別れるつもりはまったく無い。あの時は、独の勘違いだったんだ」
「……本当?」
「あぁ。……俺は、俺が記憶を失って、白雪に辛い思いをさせるのが嫌だった。白雪が無理してるのが手にとる様にわかったから。だから、俺は白雪と少し距離を置こうと思ったんだ。…でも、それは逃げだったんだよ。白雪が辛いからなんじゃなくて、俺が辛いから距離を置こうとしたんだ。だから、罰が当たった。白雪を……世界で一番大切な、愛してる人を傷つけた。最低だよ、俺は」
「……憲」
「そんな俺に言えた義理は全然無いけど、俺は……白雪、お前を愛してる。拒絶してくれたって、全然構わない。俺は、それだけの事を白雪にしてしまった。……でも、もしまだ、俺を許してくれるのなら、このドアを開けて、顔を……見せてくれないか」
……言うべき事は全部言った。今更、祈ったりなんかしない。ありのまま、俺は受け入れる覚悟ができていた。
……カチャ
「…憲、本当に?」
ドアを開けて、白雪が俺の前に出てきた。まるで、千年あってなかったかのような感覚を覚えた。
白雪の顔は涙の後がくっきりと残って痛々しい。
「本当にっ……、わ、別れな、くって……い、良いの、かっ?」
また、白雪の瞳から涙が溢れだした。
「白雪が、それを望むなら、俺はずっと側にいる。いや、いさせてくれ。俺は、白雪の側にいたい……!」
「憲……!」
白雪はそのまま俺に抱きついてきた。ぎゅっと抱きかえす。絶対に離れないという想いが白雪にしっかりと伝わるように……。

 

「全部、思い出したのか?」
しばらく抱き合って、白雪が落ち着いた後、俺は白雪の部屋で記憶が戻った事を告げた。
白雪と俺の手にはコーヒーの入ったマグカップ。さっき孝之がいれてくれたものだ。孝之は一言「よかったな」と言って、俺をスリッパで叩いてから出ていった。まぁ、妹を傷つけた輩への怒りの一撃にしては破格の軽さだよな。
「本っ当に思い出したんだな?」
「思い出したって」
詰め寄る白雪に苦笑いがでる。
まだちょっと疑ってるようだ。まぁ、記憶喪失が治ったかなんて、外見で判断出来ないもんな。
「アタシ達が最初にキスした場所は?」
「保健室。更に正確に言えば、入口から二つ目のベッドの上」
「…じゃあ、舞姫祭でアタシ達が花火をみた場所は?」
「荒神様の岩の上。もちろんキスも覚えてるぞ。その後の事も」
ボッと、白雪の顔が赤くなる。まぁ、仕方ないかな。
「ふ、ふん。本当みたいだな」
「だから、本当だって。お前が卵を電子レンジで爆破したのも、酒に酔ってキスをねだって来たのもちゃんと思い出してるぞ」
「う……それは、忘れてくれよ!」
「嫌だね。俺はもう、白雪の事はひとっつも忘れたくないからな」
「……馬鹿」
そう言って、白雪は照れながらも笑ってくれた。
その時の白雪の笑顔は、俺が忘れていた記憶の中のどんな笑顔よりも、綺麗だった。

 

END


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