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「瓦礫のジェネレーション」
【その他 官能小説】

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「瓦礫のジェネレーション」-51

健志からは、陸から美奈子とのことを打ち明けられていたこと、「美咲には絶対に言わないように」とアドバイスしたことを聞かされた。そこまでは美咲の推察通りだったのだが、実際に聞かされてしまうと最初に気付いたときの痛みや悲しみが胸に蘇る。問題はそのあとだった。
「で、美咲さんがいなくなった後、陸さんは美咲さんのことを『捜すな』って言った。もちろんそんなの無視して俺らは捜したさ。でも見つからなかったけどね。陸さんは、『俺が過ちを犯したのは事実だし、それを美咲が許せないというのならば俺には美咲を捜す権利はない』とかなんとか言ってた。俺はそれで陸さんと大げんかしたんだよ。美咲さんを放っておいていいのかって」
「……『捜すな』って、陸がそう言ったのね?」
(やっぱり、もう陸のそばに私は必要ないんだ。美奈子さんがいるから……)
「あ、でも本当は陸さんが一番辛いんだよ、もちろん。取りかえしの付かないことをしたって、飲むと愚痴ばっかり。顔みたら分かるけどすごくやつれたし。今日は、ちゃんと会って話するつもりで来たんだろ?ダメだよ何も話さないなんていうのはさ。美咲さんそういう人じゃないだろうに」
そう。ここへ来たからには、陸に会って話をしなければいけない。それはわかっていて来たつもりだ。だけど、何をどう話せばいいのか……。

「美咲!全く、電話だけで全然顔も見せないで……どこで何をしてた?」
「ごめんなさい父さん。ちょっとひとりで考えたいことがあったから」
「まあいい。それよりお前、陸くんとのことはどうするんだ?」
「陸とのこと?……どうして父さんがそれを?」
「岳人くんが教えてくれたよ、美咲と陸くんとのことを。もっと早く言っていてくれればよかったのに」
「ごめんなさい。本当に。でも、多分もうダメだと思う。……ねえ父さん、私、しばらく留学していいかな?」
「留学?……まあ、やりたいことがあるんなら好きにすればいいが。しかしちゃんと帰ってくるんだろうな?」
「それは大丈夫だと思う。じゃあ、あとで手続きの書類とか揃えて送るから」
(我侭で勝手な娘でごめんね、父さん……)
父を見送る美咲の表情には高慢で勝ち気なかつての面影はない。

輿石代議士のとなりに立って来客に挨拶をしている陸は、さっきから気が気でなかった。美咲が来ているのはすぐに気が付いたのだが、全くこちらを見ようともしない美咲の様子が気掛かりなのだ。
通夜の夜、美咲を抱いた後で疲れ切って眠ってしまった。目を覚ましたときには美咲の姿はなく、そしてそれきり連絡も取れなくなった。今さらながら自分のしてしまったことの重大さに気が付いた陸だった。よりによってこんな形で、一番大事な女性を失うことになるとは……。

やっと挨拶から解放された陸だったが、大勢の一目のある中では美咲を捜すこともできなかった。その時健志が、
「陸さん、こっちこっち」
と声をかけてきた。
「美咲が、そっちにいるのか?」
「いる。いるから早く。でないと美咲さんすぐに帰るって……」
「……でも、俺は何を言えばいいんだ?美咲にどう言えば償えるんだよ」
「あーもーっ。なんだよ陸さんだって俺のこと言えないくらい女々しいじゃないか。いいんだよただ抱き締めてやれば」
「しかし……」
陸が躊躇っていると、美咲が健志に声をかけた。
「健ちゃん、じゃあ私帰るね。陸によろしく言っ……陸?」
「美咲……ひさしぶり。元気だった?」
「ん……まあまあ、かな。陸は……痩せちゃったね、少し」
「まあね。慣れない仕事で気苦労も多くてね。俺が毎日スーツ着てネクタイ締めてるんだぜ」
そこで言葉が途切れた。美咲はだんだん気分が悪くなってきた。さっきから嫌な汗をかいている。そこへ美奈子が来た。
「陸、こんなところにいたの?幹事長と横芝先生がお帰りだから、挨拶するようにって先生が……」
親しげに陸に話し掛ける美奈子の様子に、美咲の気分が更に悪くなった。
「美咲さん、大丈夫?顔青いよ。ちょっと休んでいったら……」
健志の言葉を最後まで聞きおえないうちに、美咲の意識が途絶えた。


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