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「瓦礫のジェネレーション」
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「瓦礫のジェネレーション」-49

「実はさ、今まで黙ってたけど……俺前にボストンに留学してただろ?」
「うん」
「向こうにいた時につきあってたんだ、美奈子と。これは誰にも、兄貴にも言ってなかった事だけど」
「……本当?」
「本当。で、彼女が俺より先に日本に戻って、俺が後から帰国したら、俺の『知り合い』だって言ってちゃっかり親父の事務所に入ってて、おまけに兄貴の彼女になってて」
「……ふーん。それで陸はグレちゃったって訳?」
「そういう訳。今はなにもないよ。第一、話したのだって4年ぶりくらいだし。兄貴がああいうことになったから彼女も心細かったんだと思うよ。そういう場合だったら、美咲だって誰かに頼りたくなるだろ?これで納得したか?」
「……納得した」
「よしっ。じゃあこっち来いよ」
陸は腕に力を入れてぐっと抱き寄せた。
「陸、お酒飲むんじゃなかったの?」
「先に美咲を食べたい」
陸の唇がむさぼるように美咲に重ねられた。

「おい、美咲……」
放出した後まだうなだれている陸の股間を、美咲が両手で柔らかくまさぐっている。セックスに対する嫌悪感が払拭されたとはいえ、美咲がそういう行為を今までにしたことはなかった。というより、陸がさせなかったと言うべきかもしれない。陸は美咲に対して崇拝にも近い気持ちを持っていただけに、そんなことをさせてはいけないと思っていたのだ。
「いいの。陸、私の好きなようにさせて」
美咲は静かな声でそう言うと体の位置をずらし、まだ柔らかいものを唇で包み込んだ。ぎこちない愛撫。しかしそれをしているのはあの美咲なのだ。陸はたちまち力が漲るのを感じた。
「美咲……」
美咲の長い髪を撫でると、胸の奥から愛おしさと幸福感が沸き上がる。十分すぎる位に高まった陸は美咲に声をかけた。
「おいで、美咲」
美咲は首を横に振り、そのまま愛撫を続ける。たどたどしい舌の使い方や時々うっかり歯が触れてしまうことにも美咲の一所懸命さが感じられて、なおも愛しさが募る。
(やっぱり美咲に隠し事なんか出来ない。明日の朝にでも正直に話して許しを乞おう。それから、俺が愛しているのは一生お前だけだって誓おう……)
腰のあたりにじりじりするような快感が走る。
「美咲……いいのか?出るぞ」
美咲は頷いた。陸は美咲の髪に指を差し入れてかき乱した。限界が近付いている。
「無理して……飲まなくて、いいから……」
陸がはじけた。陸から放たれたものを、美咲は苦しそうにしながらなんとか飲み込んだ。

夕べこの部屋で起きていたことに気が付かずにいるには美咲の洞察力は鋭すぎた。もしもただの遊びや浮気ならば、いままでと同じように気にせずにいられただろうと思う。しかし陸自身の口からかつての二人の関係を聞いてしまった以上、もはや平静ではいられなかった。美奈子が陸を必要としていた時に、陸がそれに応えた。二人の間には自分が割り込むことの出来ない世界があるように美咲には思えたのだ。
「りく……」
ベッドで上体を起こして、隣で眠っている陸の顔を見る。人さし指を伸ばしてそっと唇に触れ、その指で自分の唇をなでる。涙がこぼれてきた。
(全部自分が招いたこと。私があの日あんな馬鹿なことさえしなければ、岳人さんも死ななかったし、私もずっと陸のそばにいられたのに……。もう私の居場所はない……)
部屋に散らばった服をかきあつめて身につけると、美咲は部屋を出ていった。

翌日の本葬にも、美咲の姿はなかった。


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