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「瓦礫のジェネレーション」
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「瓦礫のジェネレーション」-47

「……で、結局3回もやっちゃったんですか?陸さん」
「……どうすればいいと思う?健志」
「どうすればって、俺に聞かれてもなぁ。昔の彼女でしょう?普通の浮気とか女遊びとかよりよっぽど嫌なのだけは間違いないと思うけど。とりあえず、美咲さんには絶対に言ったらだめですよ。『正直が誠意』だなんてことはないですから。それにしてもあの美人秘書が陸さんの昔の女だったとはねえ……」
「おまけに兄貴の恋人で婚約直前だったんだよ」
「まあ、してしまったことは取りかえしつかないから、この先同じことをくり返さないのが最低条件だろうけど。そっちは大丈夫なんすか?」
「多分……と思う。向こうも精神的にダメージ受けて自分をコントロールできなかったんだろうから、落ち着けば大丈夫だと」
通夜の準備に美咲とともに来た健志に向かって、陸は苦々しい思いを吐き出した。後悔と罪悪感で美咲の顔をまともに見ることができなかったのだが、それでも誰かに今の心境を吐露せずにいられなかった。
美奈子は夜中のうちに部屋から出ていったらしい。朝目を覚ましたときには、美奈子のいた形跡は部屋のどこにもないように思えた。他の秘書とともに朝早くから忙しく働いている美奈子の様子にも前日と比べて特に変わったところはなかった。
「ところで健ちゃん、彼女とはうまくいってるの?」
「……やだなあ。まだ始まったばっかりですから。向こうも高校生でもうすぐ受験ですからね。時々は勉強も見てやろうかなとかも思ったりして」
「俺や美咲のことは恨んでるんだろう?」
「それは……仕方ないですよ。俺らがかおりにひどいことしたのは事実だし。それでも俺のことを好きになってくれたかおりを、俺がずっと大事にすることでしか償いはできない、でしょ?」
「健志お前、いい男だなあ。さすがバージン殺し」
「だからぁ、陸さん、それ止めてくれってこの前から……。第一それ全然関係ないじゃないですか」

美咲は内心の動揺を他人に悟られまいとしていた。女を抱いた次の日、陸はよく飲み物を欲しがる。美咲だけが知っている、陸自身さえ知らない陸の癖だ。まだ午前中だというのに美咲が気付いただけで7回、陸はキッチンに入って何かを飲んでいる。
(陸……どういうこと?私が帰った後で何があったの?)
美咲は不安でたまらなかった。もともとセックスが好きではなかった美咲は、陸の欲求を満たすために他の女との関係を容認してきた。陸との関係が恋人同士というのとはちょっと違うものだったこともあって、それで何も不満に感じたことはなかった。しかしあの日以来、美咲は陸がどれほど自分を愛しているのかを改めて知り、陸を求める気持ちが日に日に募るばかりだった。陸を独占したい。陸もその気持ちに応えて、あれ以来一切他の女に触れていない筈だった。それが何故今朝は……。
陸に縋り付いて問い詰めたい。抱き締めて「気のせいだよ」って笑い飛ばしてもらいたい。美咲の不安は募る一方だった。

「美咲さん、葉子が見つかったって……」
健志が息を切らせて走ってきた。
「葉子が?どこで?」
「Y県のモーテル。江口組の息のかかったグループがアジトにしてるとこらしいんだけど」
「で、警察は?」
「それが、警察が見つけたらしいんだよね。市丸の足取りを追ってて、どうも途中までは葉子と一緒に逃げてたらしくてそれで見つかったって」
「そう……犯人隠匿となるとすぐには釈放されないでしょうね」
「それになんか薬物が……Xかなんか持ってたらしいから」
「とりあえず弁護士は父さんの会社が手配することになってるけど……陸には伝えた?」
「一応。でもなんか陸さん、今忙しそうだったからちゃんと聞いてたのかどうか……」
「ねえ、健ちゃん、なんか陸様子へんじゃない?」
「へ?そうですか? 特に気がつかなかったけど……」
「ん、なら私の気のせいか。健志今日はずっといるの?」
「一応もうちょっとしたら一旦帰るけど、美咲さんを送らないといけないから夜にまた来ますよ」
「あ、ねえ。私今日ここに泊まるかもしれないから、迎えに来るだけだったら今日はいいよ。かおりちゃん寂しがってると思うし」
「いいんですか?……わかりました。じゃあそうします」


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