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「わが愛しの貧乳美女」
【フェチ/マニア 官能小説】

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「わが愛しの貧乳美女」-1

ひと頃、芸能界が巨乳のグラビアアイドルたちに席捲(せっけん)されたことがあった。

小池栄子を筆頭に、佐藤江梨子、MEGUMI、乙葉、井上和香、根本はるみ、ほしのあきなどの面々で、いわゆる巨乳タレントともいわれた連中だ。

さしものブームもいまや下火になりつつあるようだが、ひと頃のテレビのバラエティ番組は、それこそ画面から溢れんばかりの彼女らの巨乳に占拠され、巨乳なくしては夜も日も明けない状態がつづいた。

しかし、そんなブームを横目で見ながら、白々しい気分に陥っている男がいる。
亀井誠一、30歳である。

彼は以前から貧乳、
あるいは微乳といわれる乳房に、
性中枢神経が刺激されて昂奮するタイプであった。
巨乳にはどうも食指が動かないタイプ、
ようするに貧乳フェチなのである。

もちろん、誠一も男であるから、テレビ画面に巨乳の谷間が映し出されたりすると、「おおっ」とばかり膝を乗り出して画面を見入ってしまう。
しかし、それは男の本能が反射的にさせる反応であり、一時の目の保養程度のことで、本質的なところでは貧乳を愛(め)で慈(いつく)しむ性向のほうが勝っている。

最近、街を歩いていると、たしかに若い女性たちに巨乳が増えている実感はある。
そうはいっても、日本人女性の乳房は、圧倒的に貧乳のほうが多いことも
事実だ。

巨乳の女性というのは5人にひとりもいないのではないか、
ウソだと思うなら、渋谷の街でも、新宿の街にでも、
立って眺めてみればいい。
巨乳というのがいかに少ないかが理解できるだろう。

そんなことをいうと、巨乳好きの男性たちから、ほんとうは巨乳女性を相手にしたいのに、大半が貧乳女性のために仕方なく貧乳の相手をしているのであって、決してそのフェチではないという声が聞こえてきそうだ。

だがしかし、
貧乳こそよしとする日本人男性は多く、
それは深遠なる精神性に根ざした志向なのである。

話がしだいに小むずかしくなってきてしまった。
我らが主人公の誠一クンと、その貧乳の彼女との交情の様子を紹介しながら、貧乳フェチがなぜ小さな乳房に憧れ信奉するのか、その薀蓄(うんちく)を語ってみることにしよう。

誠一の彼女はすみれといい、彼より3つ下の27歳だ。
すみれという花は低山や路傍に咲く可憐な多年草で、左右相称の紫色の花を横向きにつけ、花の大きさのわりに葉や茎の細いのが特徴である。

彼女のすみれはその名の由来となった花のように、
可憐で美形の相貌(そうぼう)をして、
その花のすみれの葉や茎が細いように、
スレンダーな肢体をして、
そして、当然のように貧乳である。

誠一とすみれは同じ会社の同僚だが、彼が地方の支店勤務を終えて本社総務部に戻ったとき、隣のデスクに座っていたのが彼女である。
その彼女がスレンダー美女で、好みの貧乳とあって、彼のほうから誘ってつき合いがはじまった。
2年前のことだ。

3度目のデートのとき、ふたりは初めてホテルに入った。


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