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……タイッ!?
【学園物 官能小説】

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……タイッ!? 第四話「暴きタイッ!?」-31

「綾ってすごいよね。あたしより年下なのにさ、大会でて記録だして……」
「え? あ、はい……」

 綾の走っているところまではビデオに録画していた。ただ、見返していないせいで
記憶には薄い。

「あたしさ、綾と同じ高校だったの」
「ああ、それで……」
「また今年から一緒に部活できるって思ってたのにさ、なんか綾変で……」
「ええ」

 おかしくなった理由は元恋人の何気ない一言。頑固で一直線、時に極端な彼女なら
ではのヘコミかたの結果。

「それがさ、君とエッ……チ、エッチしてからまた昔の綾に戻ってさ。ふふ、綾ね、
あたしにも謝ってきたよ」
「そうだったんですか……」
「君のせいで」
「俺のせい?」

 そこは「おかげ」だろうと思うも笑顔になりかけた彼女に言い返すのも得策ではな
いと飲み込む。

「えっとさ、それで、なんでエッチしちゃったの?」
「それは、ゴムがあったし、あと、綾さん、初体験があんまり良くなかったみたいだ
し……」
「えー! 島本君って意外に自信家だね。なに? 俺なら綾にセックスの良さを教え
てやれるって意味?」

 嫌味ではなく素直に驚いているらしく、美奈子は口元に手を当てながら興味津々と
いう様子で紀夫の顔と、ある一点を交互に見る。

「いや、そういうつもりじゃ……でも、綾さんの身体で、男はその、喜ぶっていう
か、変なんかじゃない、素敵なんだって、そういうのを伝えたくて……」
「それって言葉じゃだめ?」

 目を伏せる美奈子はまた手を握りしめる。

「伝わりませんよ、言葉じゃ……」

 紀夫もそれに倣い、畳に指を立てる。

「ふーん、そういうもんなんだ……エッチって……」
「いえ、その、綾さんの場合ですよ、綾さん、そのことでなんか悩んでたみたいで…
…」
「君のおかげで昔の綾。けど、君のせいでまた遠くなった綾」
「遠く?」
「そ、また差をつけられたって感じ」
「差ですか……」

 美奈子の言う「せい」の意味。反芻すればかすれそうな距離にあるも、未だ届かな
い。

「あたし、綾みたいになりたかった」
「え? え?」

 膝が痺れたのか脚を崩し体育座りになる美奈子。彼女は歪な一文字に唇を噛み、眉
を小刻みに動かしている。

「脚は早いよ? けど背がちっさいし、髪だってなんかクセ毛だし、スタイルだって
そうでしょ? よくないよね」

 意識的に動かせるものでもないそれらが示す感情は?

「男の子にもそういうのされたことないし、好きとかそういうのも無いの」
「うん。うん」
「綾さ、聞いたかな? 彼氏が出来たって……あ、古い話だよ」
「別れた人ですね?」
「うん。なんでか知らないけどさ、でも、そのときあたしちょっと安心した。まだ追いつける。背だってそういうのだって! ってさ……」
「はぁ……」
「でも背はちっちゃいまんま。そういうほうだって君のせいで……」

 睨む目はどこかコミカル。本気なのか、冗談なのか? それも分からない。


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