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フェイスズフェターズ
【ファンタジー 官能小説】

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フェイスズフェターズ 一話「欲望の都市」1-11

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 カラジュスは巨大な都市だ。教皇聖下のお膝元、アモルには及ばないが、ここ南方では最も繁栄している都市だ。金の貿易で栄えている、というのが最も大きな要因なのだが、この都市にはアモルにはないものがある。すなわち『無秩序』だ。宗教組織たる教皇庁の領地では、なにかと厳しい規制があるのだ。それこそ、どんな食事をするべきか、というものから数々の仕事に関する細かな禁則事項がある。それに対して、北方に比べて教皇庁の影響力が比較的薄いここカラジュスでは、北で出来ないことが出来るのだ。

 そして、今、リタとニコラはその『無秩序』が蔓延るカラジュスの東部を歩いていた。昼間に歩いた大通りとは全く違う。簡単なテントの下に、上半身裸の男達が鎖に繋がれている。例外なく屈強な体つきの男達は、奴隷だ。彼らの後ろで酒を煽っている巨漢が、奴隷商だろう。見事な三段腹がぶるぶると揺れている。その奴隷達をまじまじと眺め、品定めをしている男達も数人いるが、揃って豪勢な服装を纏い、ぎらぎらと光沢を放つ宝石を首やら指やらに付けていた。


「奴隷が随分多いんだな」


「それもカラジュスの主力商品なのよ。岩塩と一緒に武器を持っていって、奴隷と交換して貰う。それで、入手した武器を使ってまた略奪なりなんなりをして奴隷を入手するの」


 教皇庁は、人身売買を禁止している。それが、船でたった数日の土地でこのように堂々と行われていることに、リタは愕然としていた。もちろん、教皇庁はこのことを知っていて、無視しているのだ。


「……この光景には、反吐が出るな」


「私もよ。でも仕方がないの。教皇庁は信仰を守っているだけではやっていけないの。政治もしなくちゃならないのよ」


 教皇庁は、魔族の脅威が表面的には無くなった今、かつての威光を急速に失いつつある。周辺諸国との関係はドライで、教皇庁の行い一つでどうなるかわかったものではない。奴隷貿易で、カラジュスは利益を得ている。それを禁止しろと、圧倒的な軍事力で迫れば、例え奴隷貿易が無くなったとしてもカラジュスとの関係は冷え切ってしまう。そうすれば、カラジュスが教皇庁との貿易を打ち切り、他の大国と貿易を始める可能性があるのだ。そうなると、教皇庁は非常に苦しくなる。--なにも教皇領を併呑しようと考えているのは帝国だけではないのだ。リタは、そう説明されればそれを理解できるだけの能力はある。だが、彼女は頑なで、決してリタ自身が納得することはない。


「まあ、そういった話はまた今度するとして……旦那様、こちらの店で調査をしていただけますか?」


 険しい表情になってしまっていたリタは、目の前にそびえ立つ巨大な建築物を前に、その表情を変えていた。すなわち『疑問』の形に。彼女の前の建物は、『個人浴場』と現地語とアモル語--いつもリタたちがアモルで使っている言葉だ--で書かれていた。事前にニコラから、『魔族の資金源になっているかもしれない商売の調査』と聞かされていたリタは、予想もしない商売の内容に半ば呆れる。


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