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黒魔術師の恋愛事情
【青春 恋愛小説】

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黒魔術師の恋愛事情〜因縁-5

「何っ?!お前何で…?」
 智博は軽く避けたが、起き上がれないはずの真彦がこんなにも動いているのを見て驚きを隠せないでいる。
「あんたがこの魔法陣使うのは分かってたからな。その効果を止めただけさ。てかロウソク立ってりゃ怪しむって」
 ロウソクを倒し、魔法陣の効果を完全に消してから真彦は麻里を抱き起こした。
「麻里、立てるか?」
「大丈夫。けど…今の一体どうやって…?」
「えっと…ほら、俺ってば『魔法使い』だから」
「そっか」
 その一言で麻里は納得した。
「ほら、あの二人の後ろに行って。俺は大丈夫だから」
「わかった!気をつけてね!」
 麻里は光輝と小春の元ヘと走っていった。
「魔法使いだぁ?」
 智博は怪訝そうな顔をしている。
「正確には黒魔術師さ…でなきゃあの魔法陣を崩せん」
「お前一体いつから…」
「あんたが優子の魂を捧げた直後からさ…。俺もあの後儀式をしたのさ。自分の魂を捧げ、強大な力を得るために…!って言っても、俺だけの魂じゃ無かったから、俺も無事でいられるんだけどな…」
 捧げられた魂…それは真彦自身のものと、光輝と小春のものであった。
「俺の命は俺だけのもんじゃないってことだ。それに俺だけならともかく、麻里にまで手出しやがって…許さない!」
 真彦は鞄から一枚の紙を取り出し、それを広げた。
「何の魔法陣だ?」
 その紙に書かれた魔法陣を見て、智博は思わず尋ねてしまう。
「悪魔召喚。お前も出来るんだろ?」
「ハ、お前は馬鹿か?そんな小さな魔法陣でどんな悪魔を召喚するというのだ!」
 確かにその紙は小さく、縦横一メートルちょっとの正方形である。通常小さくとも二、三メートル以上あるそれとは比べてかなり小さい。
「やってみなきゃわかんないだろ?」
 小さいと言えど、真彦の笑みは絶えない。
「唯の馬鹿か…いいだろう。『開封・レッドカーニバル』!」
 智博は取り出した人形(ひとかた)を宙に放り投げた。と同時にその人形がみるみる形を変え、巨大化までし、角の生えた赤黒い巨大な悪魔となった。
「こいつを召喚するのに数日費やしてしまったよ。だからこの人形に入れておいたんだ。…お前のはどのくらいかかるんだ?」
「黒須真彦の名においてここに召喚す…『招来・ムーンライト』!」
 ボンッと音がすると共に、魔法陣の周りには煙がたちこめる。
「召喚、終わったぜ?」
 あっという間だった。真彦は勝ちを心の中で確信した。「イッイェーイ!!まさっち、元気してる〜?」
 突如煙の中から現れたのは、元気のいい丸っこい物体…もとい、悪魔だった。
「おう、元気だぜ。ムーンも元気か?」
「もう元気元気でハッピーでグー!!」
 悪魔・ムーンライトことムーンのテンションはやけに高かった。

「何じゃありゃ?」
 初めてムーンを見る光輝は愕然とした。
「見た目は可愛いんですけど…現状で可愛さって必要ですか?」
 同じく初ムーンの小春も首を傾げる。
「真彦君、本当に魔法使えたんだ…」
 麻里は二人とは違うところで驚いていた。

 黄色い体、サッカーボールよりちょっと大きいくらいの大きさで、頭足人…要は☆のカー○゛ィーみたいな体つき。尖った短い耳。肌触りがよさそうな毛並み。そして何より…可愛い。つまり、ムーンはマスコットにすれば(特に女子高生などに)かなり売れそうな見た目の奴なのである。

「ていうか、これの意味は…?」
 光輝は持っている二つの箱を見つめた。
「絶対に意味無いぞ?これは」
 箱の中身を考えると、光輝ははぁ〜…とため息を吐いていた。



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