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走馬灯
【その他 官能小説】

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走馬灯-17

そっと田宮を頭を抱きしめる。胸が少し涙で濡れた。どうしても熱いものが下半身に沸き上がる。「私は清二のこと知ってる。人付き合いが苦手で、人の気持ちを理解したいけど、不器用なんだよね?本当は優しいのに突っ張っちゃって。清二の人生はこれからなんだよ。2人で笑って、楽しく生きて行こう。」

「かおりはこんな俺でもいいのか?」え?いやだ。変わってほしい。変わらないと話した意味がなくなるのでは?「皆にも知ってもらうの。清二の良さを。私だけは絶対に理解しているけど。それで清二に満足されたら、それこそ後ろ向きだよ。がんばって変わってね。ずっとそばで応援してるから。」田宮を見やると、震えが止まっていた。天気と共に迷いまでも晴らせ。



「なんとか頑張ってみる。」

できた。やりきった。かおりは、前の俺は田宮教の牙城を攻めきれなかった。「なんとか頑張ってみて。」ほっぺたにキスをして夕立がやんだ歩道に降りた。もうかおりになるのは、慣れた。「また明日から頑張ろうね。」「ああ。」

通り雨は夕焼けを連れてきた。美しい、とても美しい夕焼けだった。自然と足取りも軽やかになった。見える風景が何もかもみずみずしい。信号待ちの交差点。店先の緑。照り輝くインテリアショップのショーウィンドウ。駅までの近道。横に生える赤いビル。ひとしきり天井になった赤い道。それにくっついた赤い道路標識。くるくると回転し続ける赤い風景。向こうから駆け寄る赤い小林に抱き抱えられ、赤い車に乗せられる。

こういう運命だった。顛末はこうだったのか。思いは変わろうと、事象は変わらなかった。確かに夕焼けはきれいだった。確かに何もかも赤いはずだ。意識は遠くなっていく。

その後、天涯孤独で施設育ちのかおりから田宮に連絡が来なかった理由も、一度小林の家に送った時に、かおりの様子がおかしかったのも合致はする。罰の悪い思いをしたのは確か俺だけだった気がする。もう振り切られて幸せを掴んでいるのだ、そう考えて、更に気持ちはズタズタに引き裂かれ、閉ざされた。だから元カレの隣の部屋で荒々しいセックスも出来たのだ。


思考回路は低下していく。何がなんなのか分かったことから消えていく。大切なこともくだらないことも消えていく。飛ぶ感覚とは若干違う。薄れていくのは記憶。かおりの感覚だ。飛ぶのが先か、使命を忘れるのが先か。分かったのはずっと先の話だった。





過去の事実、かおりは別れた日からずっと会社を休んでいた。無論、社内にいる誰もが連絡をしないわけではなかった。明朗快活、ムードメーカー、何より華があるかおりの存在が課内で大きいのは言うまでもない。しかし、例えば躁鬱病によるフェードアウトはいつ誰に起こるかは分からない時代。世知辛い世の中は災いし、いつしか職場とは去るものは追わない、シビアな世界へと変容を遂げる。

ただ、どんな状況にあったかが知れたところで、誰からしても普段より近寄りがたい田宮と交わす話題ではなかっただろう。もう別れていたと感じていたから連絡をする必要のなかった田宮。それ以前に、田宮とかおりが付き合っていたことは、誰も知らなかったわけである。

色々な要因が重なり続け、いつしか小林はあり得ない程の出世ぶりを見せた。課長の栄転、課の縮小、先輩社員の異動・退職、中卒社長の気まぐれ。席は若輩も若輩に用意された。課長と呼ばれる立場になり、もはや誰も口出しできない存在になっていた。結果も出し続け、今やエース。かたや今まで会社に出社せず、3年間も音信不通になっていた女性社員が課長と結婚し、いつの間にか寿退社。今さら…というより確かなきな臭さが漂う。しかし、誰一人探ることはしなかったようだ。それは価値判断かリスクマネージメントか。もちろん田宮も、訳が分からないといった感じで、おかしな電話を受けたのだった。ここまでが、過去の事実。


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