投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

男性には向かない職業
【純文学 その他小説】

男性には向かない職業の最初へ 男性には向かない職業 4 男性には向かない職業 6 男性には向かない職業の最後へ

男性には向かない職業-5

03

 救急車からの連絡が入る。
 今から私たちの産婦人科へ、二十一週目で産気づいた母親を運ぶとのことだった。
 NICUを調べるとまだ空きがあったので、即座に受け入れ体勢となる。
 けれど、どうしてだろう? ステーションにいるみんなが、暗く沈んでいる。
 NICUが満床になってしまうのが嫌なんだろうか?
 私はまだまだ新人で、NICUの受け入れ体勢がどの程度整備されているとか把握はしていない。だからってまるでお葬式みたいな顔をしているのはどうかと思う。これから私達は、赤ちゃんの命を救わなくちゃいけないのに、不謹慎だ。
 みんなが暗い顔をしてるのってもしかして、産気づいた状態のせい、かな?
 確かに二十一週といえば、超未熟児で危ない出産ということは分かっている。
でも二十二週で出産して無事育った子供も世の中にはいる。きっと、情熱か呪術か気合いか何かがあれば、それが赤ちゃんに伝われば。……最悪天に祈れば、神様だってきっと助けてくれるに違いない。
 よし! 頑張ろう! お母さんも、赤ちゃんも、頑張るんだ。
 私が最初に諦めちゃいけない!
 一人意気込んでいると目の端で、先輩が白い木箱を組み立て始めた。
 白い木箱って確か……。
「せ、先輩、何やってるんですか!」
「うん、これか?」
「亡くなった赤ちゃんを入れる箱なんて組み立てないでくださいよ、縁起悪い」
「……ああ、お前、知らないんだっけ?」
 先輩の目が、気のせいかもしれないけど憂いを帯びて見えた。
「二十一週のジンクス。学校で習わなかったか?」
 聞いたことない。私は首を横へ振る。
「あのな、二十二週目に入った赤ん坊は生きられる確立が、低いけど存在する。
けど、一週間前になると、どうしてだろうな、ダメなんだよ。神様の悪戯なのかな。赤ん坊が外で生活するためにどうしても必要なモノが、この一週間で造られるんだろうな」
「……でも、発育の具合は人それぞれですよね。これから運ばれてくる人はもし
かしたら助かるかも――」
「それはない」
 先輩の目が鋭く私を射貫く。
 色々言いたいことはあった。助けようって思う気持ちが必要だとか、諦めるのは良くないとか、今の医療は昔と違うんだとか。けど、私のそうした言葉の群れは、彼女の視線に全て打ち落とされた。
「絶対に、助からない」
 先輩は言葉を句切って、私に強くぶつけた。
 本当に先輩は助ける気がないんだろうか。本当は助けたいんじゃないか。そう思うけど、先輩の目はぎゅっと細まって、瞳が奥に隠れてしまったから、彼女がどう思っているのか、推し量ることが出来なかった。


男性には向かない職業の最初へ 男性には向かない職業 4 男性には向かない職業 6 男性には向かない職業の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前