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フニと僕の成長記
【家族 その他小説】

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僕とフニの成長記5-1

僕は真っ白フワフワの犬を飼っています。名前は『フニ』です。
フニは一日中、いや一日といわず一年中、グッタリダラダラ過ごしています。
冬は前にもお話しした通りコタツから出てきません。
自らの意思では、まず出てきません。
でも夏のダラケ具合に比べれば、そんなん可愛いものです。


今日は夏休み最終日です。
それなのに僕ときたら友達と遊ぶ約束も無く、特に何をするでも無く、ぼんやりと一日を過ごしていました。
これでもかってぐらいセミが鳴き、窓の外が揺らめいて見える程、太陽はジリジリと照りつけています。
視覚と聴覚で得る『夏』はリアル以上の夏を醸し出していました。
暑さに強い僕でも、これにはさすがにやられてしまいます。
しかしここに、僕よりも遥かにやられている生き物が…。

『しぬ〜…しぬ〜…』

フニです。

『ヘッヘッヘッヘッ…』

冷たいフローリングの上でうつ伏せになり、力無くダランと下を出して短い呼吸をしています。
犬は汗をかかない変わりに舌を出して体温調節をするのですが、フニは夏の九割舌出し状態で過ごしています。

「暑いね。ねぇ、フニ?」

僕はテーブルに肘をついて、フニに話しかけます。
もちろん無反応です。

「フニィ、ちょっと遠くまでお散歩行こうか?」

言う必要無いと思いますけど、ハイ、お察しの通りシカトされました。
ぴくりとも動きません。そりゃそうですよね。
フニにとってみたらこの炎天下の中、外は地獄なのですから。その上遠くまで歩くだなんて、自殺行為もいいところです。
扇風機の風に吹かれて、フニの背中の毛がわさわさ揺れています。
ああ、そう言えば僕の所まで風があまり来ないな。
僕は扇風機の近くまで移動し、風向きを調節して床の上にゴロンと横になりました。
フローリング、冷たいな。扇風機、涼しいな。あれ、何か眠くなってきた…。
今なら夏の暑さも気にせず昼寝出来る。そう思って僕は、近くにあったクッションを掴み頭の下に引きました。
いざ眠ろうと目を閉じると、ん?どこからか怨めしいじっとりとした視線を感じます。

『ヘッヘッヘッヘッ』

視線の主の物であろう呼吸音が近くに感じ、ゆっくり目を開けました。

『フニだけあついんですけど〜…』

フニが僕を見下ろしていました。
怒っています、珍しく物凄い怒っています。暑さと相まって目付きが大変なことになっています。
僕はとりあえず上半身だけ起こして、宥めるようにポンポンとフニを撫でました。
そしてまたゴロン。
だって僕だって暑いのです。
申し訳ないけれどフニにだけ涼を与えるわけにはいきません。
そりゃあ、毛皮を着てこの暑さは尋常じゃないとは思います。それでもフニは犬として生まれてしまっていて、犬は毛皮を着て尚生きていけるから、そのままの姿なのです。
言うなれば僕もフニも立場は同じ。これはいかに涼しい場所を見つけられるか勝負なのです。


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