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Dear.
【悲恋 恋愛小説】

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Dear.Proposal-6

それから、結婚する事を晃司と小百合、仕事で海外へ単身赴任している父ちゃんに知らせた。
皆一様に祝福の言葉を俺たちにプレゼントしてくれた。
そして、ビックイベントの志穂の実家への挨拶。
志穂の父親は志穂が小さい時に他界した為、実家には母親と2つ下の妹が住んでいた。
男親ではないにしろ、「娘さんをください」と言いに行くのは本当に緊張するもので、あまりの緊張に「娘さん」を噛んでしまって「娘たん」と言ってしまった程。
志穂のお母さんは、さすが志穂のというくらい良い人だった。「娘をよろしくお願いします」と頭を下げられた時は、何故か不覚にも泣いてしまった。
涙腺バカになってるな…俺…。
志穂は今まで住んでいたアパートを出て、俺の家で暮らす事になった。移ってきたのは、婚姻届を市役所に出した翌日の事。
住み慣れた我が家に新しく人が加わるというのは、何とも新鮮で心が躍った。


時間は刻々と流れ、大学卒業…就職と、緩やかで且つ刺激溢れる毎日を送っていた。







季節はもうすぐ夏を迎える春。
俺は実家から車で20分程のやや大きな企業に就職し、仕事にもようやく慣れ始めてきた頃。
志穂は出産を来月に控え、見も心も若干の緊張で包まれているような…そんな頃。
「ただいまぁ」
ガチャリと開き慣れたドアを開ける。
奥から「おかえりー」と微かに返事が聞こえた。
「…あれ、1人?母ちゃんは?」
「ちょっと、朝聞いてなかったの?今日から出張で帰るのは明後日になるって言ってたじゃん」
「え?そうだっけ?」
居間に入れば、そこには志穂が1人、食事を用意して待っていてくれていた。
「そういや、今日検診の日だったろ?どうだった?」
着替えを済ませて志穂の向かいのソファーに座り、ふと思い出して聞いてみた。
「え?覚えてたの?今日綿貫の日だって。うん、順調ですって言われたよ。ただいつ何が起こるかわかんないから、何かあったら連絡してって」
向かいに座った志穂がにこりと笑った。
綿貫の日とは、志穂が勝手に作った言葉で、志穂の通っている病院が『綿貫産婦人科クリニック』という名から、検診の日は『綿貫の日』と言っているらしい。
「それでね、性別は本当に産まれてからの楽しみでいいかって言われた…。いいよね?それで…」
「あ?あぁ!!もちろん!!その方が楽しみも2倍ってもん…」
「男の子」
「…あ?」
「男の子だって。性別」
…ちょっと待ってくれ志穂さん。今あなた、楽しみにしておくって…。
「やっぱなんか待ちきれなくて聞いてきちゃった!」
てへっと志穂が可愛く笑う。
…こういうのを小悪魔と言うのだろうか。
「…そう、男の子なんだ…」
無感動に俺がそう言えば、
「えー、何その薄い反応!もっとこう、興奮してくれてもいいんじゃない?」
と、志穂が返す。
いやいや、それ、志穂のせいだから。志穂のせいで感動全て持ってかれちゃったから。


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