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小さなキセキ
【大人 恋愛小説】

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小さなキセキ-2

・・・・・


(ええと、お寺の入り口の門のところ・・・)


今日は、地元のお寺で夏祭りをやっている。
愛菜と私は、この祭りを一緒に見ようと約束していた。

どこに行こうか相談していた時、ちょうどその日に夏祭りがあることを思い出し、愛菜に話すと、昔は毎年一緒に行ったことなど懐かしい話に花が咲き、一緒に行ってみようということになったのだ。

東北の田舎、田んぼや畑に囲まれたのどかな町。

市街地からは少し離れているため、車を10分ほどとばさなければ、夜に遊べるようなところはない。
コンビニでさえ、歩いて行けるような距離にはなく、車で行かなくてはならない。

私は、生まれてからずっとこの町に住んでいる。

だけど、最後にこのお寺の夏祭りに来たのはいつだったか・・・
大人になった私は、この田舎町に住んでいながら、すっかり遠ざかった生活になっていた。


「麻衣(まい)ちゃ〜ん!」


ぼうっと考えていると、大きな声で呼ばれ、びっくりして我に返った。

普段はひっそりとしているこのあたりも、今日ばかりは夜店が出ていたりして、たくさんの人で賑わっているため、その声の主を見つけ出すのには辺りによく目を凝らさなくてはいけない。

人と人の間から、駆け寄ってくる人影。


「ゴメンね!遅れちゃった。」


私のそばまで来た愛菜は、肩で大きく息をし、胸に手をあてて息を整えながら、とびっきりの笑顔を私にむけた。


「大丈夫だよ、私も今ついたばっかりだから。」


愛菜は浴衣姿だった。
白地に爽やかなブルーの花の柄がとても涼しげで、深い紺色の帯や、結い上げた髪につけている髪飾りも、可愛らしいのに大人っぽい、まさに今の愛菜を飾るのに相応しい。

それに対して私は、お寺のまわりは虫が多そうだからと、ジーンズにキャミソールを着て、上から薄手の長袖カーディガンを羽織ってきた。

我ながら、なんて実用性重視な・・・

こういうのを「女子力」の差というのだろうか。

昔なら私も、お祭りといえば何日も前からワクワクして、浴衣を準備してもらったりしていたものだ。

私は妙なところで、自分が大人になってしまったことを感じた。


「よかったぁ!これ着るの、思ったより時間かかっちゃって。」

「浴衣いいね〜、すごく似合ってるよ。」

「ありがとう。麻衣ちゃん、すごく久しぶりだね。」

「そうだねぇ、成人式以来?」


私たちは、その場で立ち話をした後、少し歩くことにした。

愛菜は今、隣の県で看護師をしているらしい。
成人式で会ったときは、確か関東のほうの大学にいると言っていた。その大学を卒業してすぐに今の病院に勤務し、今年3年目だという。

愛菜は昔からの夢を着実に叶えていたのだ。


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