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Dear.
【悲恋 恋愛小説】

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Dear.Like to love-6

「それ…」
びくっと肩が竦んだ。
「好きなんだ…なんて、キスする前に言う事でしょ…?」
目蓋を上げる事が出来ない。
志穂の今の表情を想像する事すら怖かった。
「……バカ賢悟…」
ふわりと鼻を良い香りが擽る。
それと同時に身体が圧迫感に襲われ、驚いて目蓋を上げた。
さっきまで立っていた所に志穂はいなくて。
その代わり、見えないくらい近い所に志穂はいた。
俺の首に志穂の腕が回り、そのままギュッと抱きすくめられた。
「バカ…、ホントバカ…。バーカ」
志穂の言葉はバカのオンパレード。
でも、その声はどこか嬉しそうで。
「…好きだよ、賢悟…」
発せられた言葉。
聞き間違いではないだろうか。
「…え…あ…」
上手く言葉が出てこない。耳元でくすりと笑う声がした。
「聞こえなかった?好きだよって言ったんだよ…?」
志穂の腕に力が入る。
温もりを感じる身体は、全身で今、幸せを吸収している。
「お、俺も…俺も好き…」
「知ってる」
好きな相手と気持ちが通じ合う瞬間とは、何て幸福な瞬間なのだろう。
身体だけではなく、心でも志穂を感じる。
志穂の温もりを感じれる。
俺よりも一回り小さな志穂の身体に腕を回し、志穂に負けないくらい力一杯抱き締めた。
「志穂、志穂…」
「何?そんなに呼ばなくてもここにいるじゃん」
幸せ。幸せだ、とても。
「おーいおいおい、あんまり来ねーから何やってんだと思えば…(溜め息)。…て!!何泣いてんだよ賢悟!!カッコわりぃー!!」
「えっ!何々?どういう事…えっ!?何々!?どういう状況なのこれ?!!」
「うるせーお前ら!あっち行ってろ!」
ピロリン♪
「題名『賢悟、嬉しくて泣く』」
「わああぁ!!何撮ってんだ晃司このやろぉぉ!!」
「あははっ!賢ちゃん男泣きだね!ちょっと晃司、それあたしの携帯に送ってね」
「あ、私にも送ってね」
「何だよお前ら皆して俺の事を!!くそぉぉ!!」


…こうして、俺と志穂は付き合い始めた訳で。
交際は順調だった。
そりゃ喧嘩はちょこちょこするし、別れ話になったりもしたが、俺は何せ志穂にベタ惚れだった訳で、どれも早々に解決した。
本当に順調に、順調に進んでいた。

そして、転機が訪れたのは、交際から2年が過ぎた頃。
大学4年の秋の事だった。


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