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やわらかい光の中で
【大人 恋愛小説】

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やわらかい光の中で-65

 春の穏やかな風が、優しく海面を漂っていた。
 ロングボードの上級者が、何人かアウトの奥の方で波待ちをしていて、いい波を奥から掻っ攫っていた。
 ロングを避けて少し手前のアウトで待機していたが、沖から長く波に乗ってくるロングの上級者は、慎治の横を楽しそうに何度も過ぎて行った。
 仕方がなく、彼も更に奥の方で波待ちをすることにした。
 気が付くとロングより少し沖にいる自分に気が付いたが、渾身の力を込めてパドルをすれば、この位置からでもロングに勝てると踏んだ慎治は、ロングと真っ向から勝負することを決めた。

 セットが入ると、これは自分の波だと言わんばかりに板を漕いだ。
 ロングの人も同じように板を漕ぐ。
 ロングはショートボードの慎治に比べると、初速が早い。肩甲骨から体をうねらせるように両腕を動かす。
 ショートの場合、あまり体を動かし過ぎると板が安定性を失い、そのスピードが落ちる。
 ロングボードの方がショートボードに比べると安定性が高いので、全身の力を漕ぐことだけに集中できる。

 慎治は腰骨と肋骨の下あたりで板を強く押さえ、板を安定させながら、肩甲骨から腕にかけての筋力を使って賢明に板を漕いだ。上腕二頭筋が悲鳴を上げるのを感じながら、波を諦めたくない一心で板を漕ぎ続けた。

 それでもロングから波を奪うことは難しかった。
 慎治の板がスピードに乗る前に、彼の視界の隅で立ち上がったロングの人を見ると、彼は諦めて漕ぐのを止めた。
 そして、板を180度回転させて、次の波を待つためにまた沖へ引き返す。

 波待ちのポイントまで戻ると、腕と肩甲骨の周りの筋肉に疲労を感じた。

 そんなことを何度か繰り返していたが、5本に1本くらいは、ロングから波を奪うことができた。

 少しして、本日1番のいい波が沖からやってきた。

 ピークは彼の位置の程近くになりそうだった。
 この波を上手くゲットできたら、今日の自分の目論見が上手くいくと慎治は自分で勝手に願をかけ、波に合わせながら板を漕ぎ始めた。
 誰よりも先に波を捕らえようと波のスピードに合わせて腕の回転数を上げていった。横にいるロングボードを視界の片隅で確認すると、慎治より僅かに後ろから波を追いかけているように見えた。
 板が走り始め、波のパワーを感じ始めた瞬間、彼は両サイドを見て、誰もその波に乗っていないことを確認した。確認した時には、既に彼の足はその胸に引き寄せられ、立ち上がる準備をしていた。

 肩を振り被り、軽く前足に体重をかけてスピードを上げた。
 板がスピードにのり、安定性を上げると、彼の視界は一気に開けた。

 彼はめでたくその波をゲットできたのだ。自分の体が風を切る音と、波の音が同時に耳に飛び込んできているような気がした。

 前方には、慎治が立ち上がったのを見て、その波を諦めたサーファーが見えた。
 恨めしげに慎治を見る彼らの目の前を、彼は自慢気に一瞬で通り過ぎた。
 後ろを確認すると、遥か左後方に同じ波に乗っているロングボーダーがいた。
 慎治は板のスピードを更に上げるため、脛から膝にかけての筋肉を更に硬直させた。
 それと同時に足の裏に意識を集中させ、板から伝わる波面の感覚を捉えようとした。
 足裏の感覚で微妙に板を操作しながらスピードを上げ、波を滑り降りた。
 そして、降りきる前に波際に視界を移すと、彼の板は勢いよく波のトップまで上り詰めた。
 再び彼は視線を波の下に移し、スピードを上げながら一気にボトムめがけて滑り降りた。


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