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初雪と朧月
【初恋 恋愛小説】

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七夕!-1

7月1日…
6時を過ぎてもまだ空が青く見えるこの頃。

6月の夏至を過ぎて高く登り続けている太陽が、容赦なく気温を上げる。
さらに、この国は質の悪い事に湿度が高いせいで余計に暑く感じる。
温度差に追いつかない体がかったるさを訴える。
「あづぅ(暑)?」
そう愚痴を呟いて、河東はゴトリと学校机に突っ伏せた。
7月の初日からこんなようでは真夏が思いやられる、と誰かが近くにいたらツッコミをしていただろう。
だが今、河東の周りには誰も居なかった。
淀川も仲の良い先輩も、…とうぜん、河東が一番望むアイツも。
決して静かな平穏に包まれているわけでも、まして人が居ないわけでもない。
なにせ学校の昼休みだ。
級友達の話し声があっちこっちで作られたグループから聞こえてくる。
でも、河東が自分の周りに誰も居ないと感じたのは物理的な距離の事じゃない。
そのグループにでも混じって話でもしていれば気も紛れるんだろうが…気の合わない連中とわざわざ話す事は何もなかったし、彼らもそんな自分を受け入れたくはないだろう。
前はそういうグループにも関わっていたような気がするが、今ではその理由が無い気の方が上回っていた。

今年も騒ぎ出したセミの鳴き声と同じクラスというだけのクラスメート達のざわめきが暑苦しさを倍増させる。
目を閉じて、出来れば耳も閉じたい状態になると、勝手に頭にアイツの顔が浮かんだ。
幼稚園児の頃から話して喧嘩したり遊んでいた"友達"の顔だ。
もう3ヶ月は見ていないその女の子の顔……それでも脳裏から焼き付いて離れない。
『逢いたい』唐突でそれ以上先が何もない欲望が…胸や脳髄ついでに胃をギリギリと締めつける。
『会ってどうする』
『その後、また虚しくなるだけだ』
『いっそうスッパリと諦めてしまえばいい』逃げの思考が頭によぎる。
何度そう自分に言い聞かせようとしただろう。
その反面『その程度だっのか…』と同じ数だけ自分でも呆れたことだろう。
今までも何度もあった答えも出せず、退くことも進むこともできない思考のループに落ち込む。何度繰り返したかさえ自分にはもうわからなかった。
『だったら言えばいいだろ。拒否されても一緒に居れば気が変わるかもしれない』無駄に攻撃的な自分が深く暗い願望の唸り声をあげる。
『黙れ!』そんなストーカー紛いな事を考えるな。彼女に迷惑になるようなことをするなと、自分に言い聞かせる。
鳴り止む事を知らないセミと周囲の雑音が、余計にイライラさせる。
『新田先輩のようになりたいのか?』
考えてもいなかった最低な未来像。そんな人生を自分も歩むのかと引き下がらない。
『黙れ!!』
暑さに頭をやられたのか、ネガティブな発想が止まらない。
「おぃ勝明、生きてるか?」
もはや、全く脈絡の不明な言葉だ。何かの拍子に自分は壊れてしまったのかもしれないと考えた方が良いのかも知れない。
「黙れぇ!!!」
とうとう、口が勝手に叫びを上げる。
「!!?」
目の前の人物が、両手を上げて跳びさがる。
まるで昔のギャグ漫画のようだ。
「あ?ビックリした。元気そうで何よりだ」
「ごめん…暑さに負けた」
「7月だからな。…そう言えば、書いたか?」

「書く?…何を?」
書いたか?と聞かれても何も思い付かなかった。


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