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欲望の代償
【ミステリー その他小説】

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欲望の代償-2

 鷲山代表の資金管理団体への寄付を否定した主なケース
・元教師(東京) 117万円 亡くなって8年。あり得ない(妻)
・医療関係者(北海道) 30万円 こちらこそ理由を知りたい(妻)
・元教師(東京) 12万円 逆に(寄付を)もらいたい
・主婦(東京) 13万円 冗談じゃない。許せない
・元会社員と長男(東京) 計215万円 総理を狙う人のやることか(妻)

「総務省のホームページにある収支報告書は、直近の3年分だけなんだよな」
「官報にもありますけど、個人情報は不完全ですからね」
「ところで原資なんだが、鷲山個人の普通預金から秘書が勝手に埋め合わせた、そう言ってるんだな」
「ヤミ献金じゃないという言い訳ですね。収支報告書は『貸付金』に修正したと」
「過去をさかのぼれば、まだまだボロが出てきそうな気がするんだ、俺は」
 編集長はそう言うと、ニヤリと笑った。

 松田編集長の予感は当たった。俺が鷲山代表の地元紙、北海新聞のデータベースを調べていたときだった。2005年11月29日付朝刊に、鷲山代表の記事があった。
 2004年道内届け出分の収支報告書によると、複数の政治団体を受け皿に、政治資金規正法の年間上限額を超えて同じ人物から個人献金を受け取っていたことが明らかになり、さらにその数年前の収支報告書でも同様の指摘を受けていた。その団体はあの友愛懇話会と北海道友愛懇話会である。このとき、鷲山氏側は、「法の抜け道ととられてもしかたない」として、「今後は、このような疑念を招くことがないよう、適正な政治資金の取り扱いに取り組んでいきます」とのコメントを出している。

 さらに疑惑は過去へとさかのぼる。それは労働党の機関紙、青旗のスクープである。2005年以前にも架空献金の疑いが浮上したのだ。青旗は05年以降、架空名義と認めた70人について、98?04年にさかのぼり、友愛懇話会の収支報告書で同姓同名、同住所の個人献金を調べ上げた。それによるとこの7年間で39人、のべ79件、総額1640万円の架空献金の疑いが浮上したのである。もう時効を迎えたとはいえ、虚偽献金の名義数が実際の献金者数を上回るというデタラメぶりが発覚した。
「さすが労働党だな。過去10年以上の収支報告書を書き写して保存しといたんだってよ。人海戦術じゃかなわねえな」
「これも青旗の記事ですが、匿名の個人献金は過去10年で3億3800万円だそうですよ。この間の会見じゃ個人献金が少ないとかしゃあしゃあと言ってましたけど、メチャクチャ多いですよ」
 政治資金規正法によると、5万円以下の献金は収支報告書に氏名や住所を記載する必要のない匿名献金として扱える。鷲山氏の個人献金に占める匿名献金の割合は約6割と他の政治家と比して著しく高く、最も多い年には千数百人以上の匿名献金があったことになる。これらの献金の実態は、第三者には直接確認することができない。政治資金を企業から個人へというのは民生党の主張だが、匿名献金というブラックボックスを使えば金の流れを世間の目から遮断できてしまうのだ。

「福本、資金管理団体の銀行口座はどうなってるんだろうな」
「そりゃあ金融庁の目が光ってるから隠滅は無理ですよ。何重にもバックアップが」
「そうじゃねえよ。元の口座も振込人とかデタラメなんじゃねえか? だから訂正しようにも収拾がつかねえんじゃないかな」
「編集長、俺初めは、金の出所は母親名義で、贈与税逃れのためにシステムを利用したと思ってたんっすけど」
「ふん、で、いまはどう思うんだ」
「これ、党ぐるみのマネロンの可能性ありますよ。自分の虎の子の金にしてはなんだかルーズすぎる。金の出所はソーランかミンタンか知りませんが、法的には受け取ってはいけない金かもしれない」
「確かに最近の民生党は常軌逸してるな。自分たちが提出した政治資金規正法改正案の審議拒否はするし。よっぽどこの問題を突っ込まれたくないんだな」
「それとテレビの民生党マンセーは凄いですね」
「そりゃ民生党は電波料半額にするって公言してんだぞ」
「なるほど。毛針に釣られてるわけですね」
「なんでも通信・放送を総務省から分離して、国家権力を監視する役割を担わせるそうだぞ」
「国家権力は、国民が監視するんじゃなくてテレビ局が監視するんですね? で、そのテレビ局は、いったい誰がちゃんと監視してくれるんですか?」


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