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『六月の或る日に。』
【悲恋 恋愛小説】

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『六月の或る日に。2』-9

あたしは馬鹿だった。
とてつもなく、馬鹿だった。


嘘でもいい。


『大事だよ。』


そう言えば良かった。


本当は、いつもそう思っていたのに。



ーーーああ、あたしはいつもこうだった。


本当に大切なことには、いつも少し遅れて気付く。


愚か者だ。


*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*

あたしたちが大学を出てやってきたのは、初めてデートした公園だった。

あの頃と何も変わっていない景色が目の前にはあった。

「お、あそこじゃん?」

公園の中を少し歩いて、夏樹がふとあるベンチを指差した。

ああ…。

「そうだね。」


あの日、あのベンチに座って湖を眺めながら、あたしたちはあたしが作ったお弁当を食べた。

「なっつかしいなー。結構ちゃんと覚えてるもんだな。」

「うん。」

夏樹は嬉しそうに目を細めた。

「夏樹さ、あの日緊張してたよね。すっごいいつもよりお喋りでさ。」

あたしは相づちを打つばっかりだった。

「そりゃそーだろ。初デートだしさー…、男だしリードしなきゃなとか、色々考えてさ。」

「あたしが作ったお弁当、『おいしい』って連呼しながら食べたよね。」

「ああ、あれはマジでうまかった!春美ってこんなに料理うまいんだとか思って感心したし。」

「なによそれー。出来ないと思ってたの?」

「いや、別に。……つうか、あれ食って、俺彼氏っぽいって実感して、なんか嬉しかったんだよな。」

夏樹はあの日と変わらずに傍に座っている。

あの日ほど、お喋りじゃなくなったし、茶色だった髪も黒に変わった。

あたしたちの間には、もうあの日のようなトキメキはなくて、二人でなら何をしていても幸せってゆうような温かい気持ちもなくて、

でもやっぱり一緒にいれば楽しくて、思い出話をすれば涙が出そうなほど懐かしくなって、そしてやっぱり、あたしは夏樹を愛しく思う。


でもこの『愛しさ』が、あの日の『愛しさ』と同じものではないこと、もうわかっていた。


ああ、何でだろう。

我慢出来ない。制御出来ない。

泣きそうだよ。


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