エリザベス・ファイナル-1
それから半年後に姉…マルセルが退院した。
今まで人形たちと一緒に暮らしていたけれど、１人ぼっちになったのを機会に屋敷を手放す事になった。
今後は私…グロリアスの自宅に住む事になったのである。
姉が住んでいた屋敷は解体され、国立大学が新キャンパス建設の為に土地を買い取ってくれた。
専門業者によって解体され、更地と化していた我が家の跡地を見て、姉はちょっぴり寂しい思いになっていた。
いつかは、この日が来るのを大方は予想していたらしいけど…
でも、イザ…今になって、何とも言えない切なさを感じると言う。
姉の気持ちも分からないでもない。
もうかれこれ、30年以上も住んでいたのだから、屋敷への愛着も強いだろう。
１人ぼっちになったと言う事は、ずっと連れ添って来た人形がいなくなったと言う事。
私が勝手に人形たちを手放してしまった事を、姉はどう思っているのだろうか？
「仕方がないわネェ」
意外とアッサリとした返事である。
あれほど、人形たちを大事にしていた姉だ。
（姉にとっては）親愛なるパートナーを失ってしまったのだから、心の中はさぞ…穏やかではないなと私は思っていた。
よくよく伺ってみるとやはり…
心の中は悲しさでいっぱいだと言う。
でもそれは、単に人形を処分されたと言う事ではなくて…
エリザベスの心を最後まで変える事が出来なかった無念さだとか。
エリザベスを溺愛して何も言わない事に、私は姉を軽蔑な眼差しで見ていたけれど…
姉は世話主として言うべきところはキチンと、言っていたようだった。
でも当のエリザベスの方が素直でなく、いつもワガママを通してばかりいたようだった。
それでも姉は、エリザベスに対し自分を見つめ直すよう…幾度も説得していた。
「美しくて、気品溢れる高級人形は結構だわ。
だけどアナタは、今の本当の自分を知らなすぎる。自分の愚かさに気付いていないし、見つめ直そうともしない。
このままだとエリザベス、アナタはダメな人形になってしまう」
姉の説得に対しエリザベスの反応は……
やはり、イマイチ鈍った。
「私はエリザベス。美しく、気品溢れる高級人形」とまあ同じセリフを連発して、素直に耳を傾けようとはしなかった。
姉から色々と説教されて、プライドを傷つけられてたのか…
エリザベスは子供人形たちがウチに来てから、姉への態度を改めた。
優しくて温和な性格と言う仮面が取れて…
ワガママでプライドが高く、気が荒いと言う本来の性格を見せるようになったのだった。
エリザベスは最後の最後まで、自分を変える事をしなかったようだ。
私はこの事を、シェリー姉さんに電話で話してみた。