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loop
【幼馴染 官能小説】

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loopV-6

『はるか』


頭の中に、くっきりと彼の呼んだ彼女の名前が浮かぶ。

“春説”の話をしていた時の由紀はなんて穏やかな表情をしていたんだろう。
彼は自分でそれに気づいていただろうか。

そんな表情をしているのは、彼が母親の話をしている時くらいだったように思う。
マザーコンプレックスとまではいわないけれど、大切そうに、照れながらも実は自慢したいような、そんな表情。

祐介は特に疑問に感じた様子もなかったようだし、彼女の話を聞いたこともあるようだった。

その事に疎外感を感じて、あたしはもやもやとした霧の中にいるような気分になっているわけではなかった。

これは―――。



視界の中で、ブラウンの髪が少し揺れて、あたしが顔を上げると、彼女の横顔が微笑むのが見えた。

いつも硬質的な彼女が笑うと、ひどく幼い表情になって、そしてその無邪気な子供のような視線の先には、あたしが一番見たくなかった――――、
由紀が立っていた。





これは―――。

『嫉妬』だ。

目の前の景色がぐらりと揺れた気がする。
心臓が大きな音をたてて、どくんどくんと波打つ。
この感情を初めて言葉にして、わかってはいたけれど、あたしにとってかなりのダメージだった。


由紀はこの広いカフェにあたしがいる事に気づいてはいないようで、彼女に向かって優しく微笑んでいる。
その笑顔は、あたしが今までに見たことのないような、うまくは言えないけれど、彼の、由紀そのもののような表情だった。

そんな由紀のそばに自然といる彼女に、あたしは妬いている。

その事実にあたしは戸惑った。
気付きたくなかった、ともう1人の自分が言っているような気がした。



あたしは一刻も早くこの場所から離れたくて、やっと冷めたミルクティーもろくに飲まずに席を立った。
立った瞬間、椅子がテーブルにぶつかり、大きな音を立ててどきりとしたけれど、由紀は頬杖をついて目を細めながら、彼女が先程の本を読んでいるところを眺めているようで、幸い、こちらを気にする素振りもなかった。


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