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「今日もまたあの場所で」
【青春 恋愛小説】

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「今日もまたあの場所で」-3

自分で何言ってるんだ。というツッコミは置いておくとして、言いたいことは理解できた。と同時に、岡崎の普段のあのキャラはやっぱり作っていたものだったのだと確信。僕が感じた胡散臭さは間違いでは無かった。しかし、なぜ岡崎はこんなことを言ってきたのだろう。今の台詞はそのまま自分のキャラは作り物だって認めているようなものだ。そのことを言うと、岡崎は苦笑混じりに答えた。

「どうせバレたんなら別にいいかな、って。それにあなた、友達少なそうだから、言いふらされるってこと、なさそうだし。」

その言葉にはムッときたが、残念なことに事実だから、反論はしない。

「それにあなた、私のことキライでしょう。」

いつのまに取り出したのか、新しいタバコに火を点けながら言った。

「そんなこと…」

無いっスよ。と言おうとしたが、それは岡崎の言葉に遮られた。

「わかるわよ。自分がどう思われてるかどうかなんてね。一応あなたたちより5年は長く生きてるんですからね。」

聞いていてバツが悪くなった。それを隠すために

「それでですか、今日殴ったのは?」

なんて言ってみた。もちろん冗談でだ。すると

「そうねぇ、それもあるかも。」

至極真面目な表情で言い払った。なんてやつだ。

「それで、普段のあんたが嫌いな俺なら、本性見せちゃっても、別に害はないかな。ってとこスか。」

「本性なんて、ヤな言い方ね。」

ふうっと煙を吐き出しながら発したその声はいつものものよりもいくらか低い響きだ。声も少しつくってるんだな。

「で?」

その声のまま訊いてきた。

「あなたはどうしてこんなところに?」

「…人生というものについての考察を、少々ね。」

うまくはぐらかしたかと思った(別にはぐらかす必要は無かったが)が、

「ふぅん、何だか難しいこと考えているのねえ。」

真面目な顔で切り返された。本気でそう思ったのだろうか。どうにも会話のテンポがかみ合わない。

「で?そっちは何しに。」

今度はこっちから聞いてみた。まあまともな答えは期待してないけど。

「タバコ吸いに、に決まってるじゃない。」

「…だったら別にここじゃなくても。」

「…」

黙殺、か。それならそれでいい。深く詮索するつもりも干渉するつもりも無いし。しばしの沈黙。風に乗ってきた紫煙が僕にまとわりつく。タバコの煙ってのはどうも苦手だ。

「時々ね…」

何だ?と思って右を向いた。

「ここに来るの。」

ああ、さっきの続きか。

「嫌なことがあったり、なんか気分がまいっちゃったときとかにね、こうやって景色でも眺めていようかなって。」

「タバコもここでなら人目も気にせず吸えるし?」

「それもあるわね。」

僕が横槍を入れると、苦笑まじりに答えた。

「ストレス溜まるのよ、仕事柄。生徒からも、同僚の先生からの目も気にしないといけないし、いい先生やってないとだからね。それに学年主任の大泉の奴がぐちぐちうるさいし。ハゲの教頭はいやらしい目で見てくるし、生徒がなんか問題起こすと責任全部よこされちゃうし。それに授業サボったり、居眠りする生徒もいるし。」

…最後のはイヤミに違いない。僕は抗議するような視線を向けたがそっぽを向いて煙を吐き出すだけだ。

「ということで、癒されたいなぁって思った時に、ここ来るの。ここから見る景色、綺麗だからさ。」

「先生さあ…」

僕が口を開くと、ばっ、と左手をはらうような仕草で言葉を遮られた。

「先生。っての、止めてくれない。ほら、もう放課後だし。できるだけ教師ってしがらみに縛られたくないの。それにあなただって私のこと先生だなんて尊敬してるわけじゃ無いでしょう。なのに先生って呼ぶのって、なんか欺瞞じゃない。嘘つかれるのってキライなの。」

よく言うよ自分は日常的に嘘ついてるくせに、と思ったが口には出さない。藪蛇になることは目に見えてる。それにその申し出は僕にとっても有り難い。僕も嘘をつくのは嫌いだ。さて。

「岡崎ってさあ・・・」

ちゃんと呼び捨てで話を切り出す。

「友達いないだろ。」

「はあ?」

何言ってんの?と、気分を損ねたことを露骨に示すような声で抗議する。とりあえずそれは黙殺するとして、その結論に至った推理の過程を披露してやった。

「だっていきなり愚痴るんだもんよ。一応、生徒でもある俺に。しかもなんかどうでもいいようなこと、いじいじ悩んじゃってるし。それで、まあ少なくとも、本音言えて、愚痴聞いてくれるような近しい友達はいないだろう、って思ったわけ。ハズレ?」

岡崎は、左手を少し浮かせて、口を開きかけた。反論の言葉を捜したのだろう。しかし見つからなかったらしく、やれやれといった感じで頭をふった。


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