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小悪魔たちに花束を
【学園物 官能小説】

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小悪魔たちに花束を【新天地編】第一章 晴嵐編入(前編)-5

  3
 
「あそこが、うちの学校(晴嵐女子中)の購買部だ」
 指差す久石さんの陰からひょいと首を伸ばして、その先を覗き込むように見る。
「あれが、………購買部!?」
 素っ頓狂な声を出してしまった後で、慌てて口元を両手で塞いだ。
 そしてそんなボクの事を、何故か怪訝な表情で見下ろしてくる久石さんたち。
 呆れて、開いた口が塞がらないって言葉をこの時、ボクは初めて実感した。
『購買部。って言葉に騙された』
 
「購買部じゃないし………。
 ってか、コンビニでしょ。あれは既に?」
「はぁ!?
 購買部って、こうだろ、ふつー?」
 
 ……………。
 
 なんか今、久石さんがとてつもなく恐ろしいことを、口にしたような気がするんだけど。
「ってか普通、中学には購買部すらないし」
「知らなかった〜ぁ!」
 山岸さんまで、信じられないことを口走ってる。
 三里さんの方を振り返るけど、彼女は黙ってついて来てるだけ。
 その表情から、彼女はどう考えてるのか、分からない。
 下手に聞いて、更に常識から外れた言葉を聞く羽目になるかも。
 そんな思いにとらわれて、ボクは前に向き直る。
『……もぅ、どおでも良いです』
 
 
 購買部に着いたボクは、カウンターの向こうに立つ、四○代ぐらいのおばちゃんに、声をかけた。
「水着、欲しいんです。けど」
 地味なスクール水着とは言っても、ボクが買おうとしてるのは水パンじゃなくて、女子用の水着なんだから、どうしてもその声は、やっぱり遠慮がちになってしまう。
 それは、しょうがない事なんだけど。
 それでもボクの身体に見合った水着を、奥から出してくれた。
「フリーサイズになってるから大丈夫だと思うけど、どうしても合わなかったらまた来なさい?
 合う物に交換してあげるからね」
 そう声をかけてきながら。
 殆んどギリギリだったけど、こうしてなんとか水着を手に入れる事が出来た。
 
「おばちゃ〜ん、このタオルとバッグも、貰うよ〜ぉ?」
 そう言いながら、山岸さんがボクの隣に立ち、お金をカウンターに置くと、そのタオルとバッグをボクの胸に押し付けてきたんだ。
『こんな物まで……』
 訂正。
 ここまで来たら、もう立派に百貨店(デパート)だよ。
「タオルもないと、困るでしょお?あげるぅ」
 山岸さんの台詞に、ボクは慌てる。
「そ、そんな事、駄目だよ。後でちゃんと払うからね。
 でも、ありがとう」
 山岸さんは、ちょっと寂しそうな顔をしたけど、それでもすぐ嬉しそうに頷いて来てくれた。
「さっさと更衣室に行こうぜ」
「うん、そうだね。
 もう今からだったら間に合わないかも知れないけど、それでも早く行かないと」
 ボクは彼女たちに案内されながら、そのまま更衣室に向かった。
 
 みんなに案内されて、更衣室に着いたボクは、そこで久石さんたちの前で一緒に着替えるんだって事に、やっと気が付いた。
「どうしたんだ、鳴海?早く着替えろよ」
 更衣室の入り口で立ちすくむボクに、ブラウスを勢い良く脱いだ久石さんが、怪訝な顔を向けてくる。
「う、うん……」
 ボクは彼女たちの姿が目に映らないように視線を逸らしながら、ネクタイに手を掛ける。
『女の子の前で裸になるのってやっぱり、恥ずかしいな』
 そう思いながら、脱いだブラウスを教えられたロッカーに掛けて、ブラを外そうと両手を背中のホックにかける。
 
 ……………。
 
『外れない』
 ムキになってもがくけど、悪循環。
 そんな時、ボクは両手の指を掴まれた。
 背中越しに見やると、それは三里さんだった。
『三里さん、もう着替え終ったんだ』
 そう思った瞬間、今までボクの胸を押し包んでいたブラの圧迫感が、ふっと消えて、ピョコッと突き出た桜色の蕾を撫でる。
 あれだけ悪戦苦闘していたにも関わらず、外す事に失敗し続けていたホックが、簡単に外れたんだ。
 まるで魔法が解けるみたいだった。
 そのまま二の腕をストラップが滑り落ちないように、慌てて両腕を交差させるように抱え込む。
「あ、ありがとう。三里さん」
 熱くなり始めた顔を向けて礼を言うと、三里さんはただ微笑んでくるだけ。
 それからボクは手間取った時間を取り戻す為に、急いで水着に着替える。
 競泳用水着って、言うのかな。
 ボクが知ってるような、普通の真っ黒なスクール水着なんかと違って、水色の生地に斜めに大きくレインボー・ラインが走った、目も醒めるようなデザイン。
 それがボクは、余計に恥ずかしくなった。
 背中が大きく見えてるし。
 ちょっとハイレグ入ってるし。
 こんな姿、漆原たちに見られたら、いい笑い物だよ。
 いや、もしかしたら発情するかも。
 ……考えるのやめ。
 
「皆、待たせてごめん」
 三人の方を振り向いたボクは、そこに多少引きつった、三人の表情を見た。
「鳴海って、小学生みたいにあどけない顔して、け、結構ワイルドな奴だったんだな」
 
 あ。
 
 そう言えば、水着に付いてたタグとか噛み千切ってた。


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