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「アジアの闇を追え!」
【ミステリー その他小説】

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「アジアの闇を追え!〜前編〜」-5

「ミズさん、俺のことバカにしてるっしょ」
「いやあ、そんなこたあねえよ。お前は最初から大がかりな組織犯罪説だったな」
「じつは事件の後に急に理由もなく店を畳んだチェーン店がいくつかあるんっすけど、ある場所に集中してるんですよ」
「どこだ?」
「東京と福岡です。東京が下北沢、千歳烏山、亀戸、亀戸は夜逃げみたいな感じですけど。あと福岡」
「福岡? 何区だ?」
「早良区と中央区です」
「早良区か。博多湾に面したとこじゃないか。北の覚醒剤もほとんど福岡から入ってくるんだよな」
「ミズさん、他に被害者がいると仮定して、どこに連れてかれたと思います?」
「生きたまま海外だろうな。でなきゃこんなに必死に隠すはずがない」
「やっぱり北絡みですかね?」
「工作員が上陸するのと逆だと考えればいいんじゃないか? ボートで沖合に出て、そこで工作船に積み替える。大阪は難しいから警備の緩くなる兵庫か、いっそのこと山口、福岡」
「積み替える。女性は積荷ですか」

 その後、俺は役員の経歴を一人一人調べていた。すると、なんとも気になる人物が浮上した。最初に大阪府警から事情を聞かれた浅野常務である。浅野常務は最年少の役員で社長の信頼も厚かった。しかし、調べてみるとすぐおかしなことが見つかった。ダイヤモンドの職員録で検索にかけても、出身地と出身校がヒットしないのだ。そしてプロフィールを見ると、30代前半までの経歴が不明なのである。30代半ばで韓国系の外食企業に3年間勤め、無名の会社に1年在籍したのちさわやかランチに入社し、以降はとんとん拍子の出世だ。俺はこの無名の会社がとても気になり、デスクに話して東京に行かせてもらうことにした。すでに廃業したこの会社は神楽坂にあった。
「デスク、行ってきましたよ」
「お、どうだった?」
「会社の痕跡はありません。ただ近所の人に浅野常務の話をすると、ほとんど見かけたことがないと」
「そんな大昔の話でもねえよな」
「で俺、一応会社の閉鎖登記謄本取ってきたんっすけど、その定款にですね」
「定款がどうした?」
「気になったのは事業内容です。えーっと、通信機器の販売・輸出、海産物の輸入・卸等々あってですね、こんなのがあるんですよ。マツタケの輸入・販売」
「マツタケの輸入? だったらお前、お相手はあの国しかねえんじゃねえのか?」

 北川と三橋の拘置期限が来た。さすがに検察も不起訴にはしなかった。求刑は北川懲役10年、三橋も同10年だった。


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