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「チャリ・マジック」
【青春 恋愛小説】

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「チャリ・マジック」-2

ひとしきり話して。お店を出た。
ほんとはもっと一緒にいたいけど。透は明日早くから出かけるらしくて。
帰り道。実は私と透のうちは、同じ市内で、方向も一緒。
高校の時は一緒に自転車で帰ったこともあったな。
その自転車も、もう乗らなくなって。今日はバスで駅まで来たんだ。
透は、自転車で来てた。私も自転車で来てたら、一緒に帰れたんだけどな。
「あ、私、バスで来たんだ。」
「でも、バス停から結構歩くだろ?送るよ。」
「自転車で?」
「おぉ!大丈夫だよ、こげ!なんていわないから。」
「じゃあ、お願いっ!」

風が冷たいけど。
透にぎゅってつかまってるから。ドキドキしてしょうがないよ。
透の背中に顔を寄せて。冬の空って、星がきれいだなぁ、なんてふいに思った。

「あのさ。」
話しかけられて、我にかえった。
「ん?」
「今、好きな人とかいたりする?」
「はい?」
「いいじゃん、今なら顔見れないし。」
いるけど、透だよ、って言う勇気はなくて。
「いるような、いないような…。あきらめようとはしてるんだけどね。」
「ふ〜ん。
じゃあさ、あきらめちゃえよ。ちゃんと告ってから。」
「うん…」
「だめかわかんないんだろ?だめだったら、また、飲みにつきあってやるから。」
「そうだね…」
そうだけど。透にふられたら、どうするのよ?もうっ!
でも、これが最後かな。今なら、言えるかな?
「じつはね。」
「うん?」
「好きな人、高校の時から好きだったんだ。」
「…へぇ。」
「同じクラスだったんだけど。」
「へぇ。」

へぇって。トリ〇アじゃないんだから!
「全然、気づいてなかった?」
「あぁ。」
「そっか…」
今なら、まだ引き返せる。
けど、もう、友達でいるのも辛いんだよね、言わなくちゃ。深呼吸して。
「…透だよ。透が好きだったんだ、ずっと。」
「…うん。」
「付き合って、もらえますか?」
透の顔は見えないけど。顔が上げられない。だめだったらどうしよう?歩いて帰ろうかな。

「…はぁ。やっと言ったな。」
透が振り向いて、ニヤっと笑った。
「え?」
「気づいてないわけ、ないだろ。バレバレ。」
「えっ、え?え?なんで…え?」
「だから、知ってたんだよ。けど、卒業しても何も言われないし。もう、終わってるのかと思って、諦めてた。」
「はぁ…」
「だからっ!…俺も涼子が好きだった。」
………
「なんで…
なんでもっと早く言ってくれないのよ!」
「だって、なんか…なんかだよ!」
「なんかって何よ!」
「だから………」


そんなやりとりを繰り返しながら。歩いて帰らずにすんで。大きな背中にもっとぎゅって、力を込めて。
ありがとって、つぶやいた。
これから、移動は自転車にしよう。
一人の時も二人の時も。
だから、ずっと。いくつになっても。
こうして並んでうちに帰れますように。空を見上げながら願った。


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