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「チャリ・マジック」
【青春 恋愛小説】

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「チャリ・マジック」-1

透からメールが届いた。
「冬休み、そっち帰るから。暇あったら飯でも行こうぜ!」
なんて、ノンキなメールが。どこまでほんとか分からないよ?

こっち戻ってくるときくらい、連絡してよ、って言ったのは私だった。
高校を卒業して、地元を離れて、私の知らない人達に囲まれて、少しずつ、少しずつ、確実に離れていくのがさみしかったから。少しでも、どこかで覚えててほしかったから。

だから。
約束、覚えててくれたのは凄くうれしかったんだ。
けど、やっぱり、ただのあいさつなのかな?多分、この街で会うなんてないのかな……なんて、考えちゃう。
自分が傷つくのが怖くて。自分から声かけるのが悔しくて。
「いつ会える?」
ってメールを何度も作っては削除してた。

だから、ね。
「こっち着いた。いつなら暇?」
ってメール。保存しちゃうくらい、うれしかったんだよ。透に会えるなら、いつでも暇です!


「待ち合わせは、あさって改札前ね!」
こんなメール送れるなんて。送った後で、不安になるくらい、うれしかったんだよ。

ねえ、透?
私とっては、あの頃からずっと、大切なソンザイなの。
あなたにとっても、そんなソンザイになれるかな?なりたいな。
あさって。あの頃より、もっと沢山、楽しい笑い声が響きますように。携帯握りしめて、そっと祈った。


やっと、やっと、待ち合わせの時間。一つ深呼吸して。冷たい空気が、少し冷静さを取り戻してくれる。
ぐるっと見渡したら、いた。少し、かっこよくなったかな?なんて思いながら、歩いていく。透の見てるのと、直角の方向から。
透は眼も悪くて、視界に入りにくいはずなのに。私のメイクも上手くなったはずなのに。もう見つかっちゃって。顔がゆるむ。
向かった先は、ちょっとおいしい居酒屋さん。ファジーネーブルで、乾杯する。私と一緒で、柑橘系が好きなとこ、かわってないなぁ、なんて思いながら。
話していたら、透の携帯がなった。
「わりぃ。」
軽く謝りながら、席を立つ。話してる顔は、自然にゆるんでる。
彼女…かな、やっぱり。気まずくなるより、友達でいつづけることを選んだのは私だけど。透との距離は遠くなってくけど。
これっぽっちの勇気も無い自分を少し嫌いになった。

透が席に戻ってきた。
「彼女?」
「いや。部活のヤツ。彼女いないし。」
「ふ〜ん。」ほんとに?じっと見つめて。
「ほんとだって。かわいい子が周りにいないんだよ。」
「学校、女の子ばっかじゃないの?」
「量より質でしょ。」
「なにそれ、超失礼!」
笑って、オチが付いちゃった。上手くごまかされたかな?

「でもさ。」
「ん?」
「ほんとに。彼女いたら、飲みに来ないし。」
「うん。そうだね、透らしい。」
「そういう、涼子はどうなんだよ?」
「私?私も彼氏がいたら、来てないよ。」
「だろうな。そんなおこちゃまじゃ無理だな。」
「おこちゃまって何よ!」
「見たまんまだろ?」
笑顔につられて、まぁいいか、って思っちゃう。


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