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無味乾燥
【ショートショート その他小説】

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ノスタルジー・アンゴワス-1

星達は瞬き、月は僕たちを照らす。時刻は深夜。僕たちはついに見つけた。『たいむかぷせる』と拙い字で書かれた白い箱。そう、僕達はタイムカプセルを探していたのだ。

「この字だれ〜? この汚い字ぃ」

妹――美由紀は過去の字を見ていった。

「これはお前の字だぞ、美由紀。『みゆきが書く〜』って言って、書いたじゃん」

友達の智也は言った。智也とは俗に言う幼なじみの関係で、今もなおこの関係が続いていて、自慢の友人の一人である。

「うっそ〜。こんなに字、下手じゃないよ〜。お兄ちゃんじゃなかった? これ書いたの?」

どうしても自分の字だと認めたくないらしい。だから、『たいむかぷせる』の字を指差しながら、僕に言った。

「僕じゃないよ。智也も言ってるとおり、これは美由紀の字――

そう言い切る前に、智也は手をたたいて、言葉を遮った。そして、言葉を続けた。

「はいはい。そこまで。さっさと開けようぜ?」

 さっきまで僕と話していた美由紀さえも、早く開けようと言い出した。少々悲しくなってきた……。


蓋を取ると、いかにも子供らしいものがたくさん詰まっていた。トレカ、野球ボール、そして、『十五年後へのぼくへ』と書かれた手紙たち。

下手な字を見て、ふと思い出してしまった。あの切ない思い出を……。


『深夜メモリー』

ガーン、ガーンと何かを壊す音が繰り返される。ショベルカーやトラックなどが出入りを繰り返されていた。

黄色いヘルメットをかぶって、小学三年の僕と智也、小学一年の美由紀がいた。ただ眺めている事しか出来なかった。今年閉校し、今まさに何年間も過ごした小学校が壊されてようとしているに……。

美由紀は涙を流し、智也は工事のおじさんたちに抗議していた。でも、僕はどちらも出来なかった。ただ立ち尽くすという行為だけで、精一杯だったからだ。

だからかもしれないが、今までの小学生活の思い出がふっと思い出された。だが、その時こんな切なく、悲しい思いになるなら、思い出なんていらない。そう思った。



その後、僕達は学校跡地の近くにあった木の根元に『たいむかぷせる』を埋めた。思い出を封印しておきたかったからだ。



あれからもう十五年。その時のことは笑い飛ばせるようになっていた。思い出は風のように変化する。だからこそ、大切にすべき。なんて思っている。

End


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