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今夜、七星で Yuusuke's Time
【OL/お姉さん 官能小説】

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今夜、七星で Yuusuke’s Time <COUNT2>-2

送信した画面に、もう後戻りは出来ないと、また溜息。
午前2時まで営業の七星だけど、いつもより2時間くらい早目に出勤して先に帰らせてもらおう。
11時前にはライヴも終わり、暇になる。
まあ、無理だと言われたら椿サンには悪いが違う日にしてもらおう。
そう自身で理屈をこね、携帯電話の画面を閉じる。
長くなった灰を落とし、二本目に火を点けながら灰皿を抱えて風呂場に向かう。
洗面台とトイレも配置されたユニットバス。湯を流し入れながら、若干曇ってきた鏡を前に髭を剃った。
シェービングフォーム、剃刀、ローション。いつも通りの順序と方法で髭を剃ると、少しだけ落ち着いた。
知らない相手と寝るのは、毎回少なからず緊張するものだ。

恋しくて会うとか、そういう種類の気持ちじゃないが、何も知らない相手に自分の素を見せるような行為。
俺のセックスをあの人はどう受け止めるか。
そんな緊張だ。

剃り終えた顎を摩り、湯船に浸かって煙草を吸って考える。
椿という女が俺にどういう期待をして体を開くのか。
期待通り満足させて、どうやって突き落とせば良いか。

俺は風呂から上がっても、練習をしていても、飯を食っていても。
最低だな、そう思いつつ。
もやもやを掻き消すように。
七星に行くまで始終、馬鹿みたいにセックスについて考え続けていた。





深夜、23時。
土曜は流石に混み方がハンパなくて困ったが、22時半には上げてもらい目的地へと急ぐ。
時計を気にしつつ、半ば早歩きで地下鉄丸ノ内線に乗り込む。そこから大体15分くらいだろうか、途中で山手線にも乗り換えて着いた先は高田馬場。俺のホームである。

数回のメールで椿サンの自宅は目白であると知った。
近くに住んでいることに驚き、だったら馬場駅で、との話に。
こんな夜中に女一人、フラフラと新宿まで来させるのは危険だ。特に見た感じどうも危なっかしい椿サンなら尚更の事。
一度は七星に来いと言ったものの、それを取下げて時間ギリギリまで自宅待機を伝えた。
迎えに行ってもいいけれど、自宅を男に知られるのは嫌だろうしね。


携帯を開くと23時を少し過ぎていた。
待ち合わせは23時半。
駅構内は昼間の混雑ぶりは無く、少し寒々しいくらいだ。

駅前の喫煙場所で煙草をふかしながら、ぼんやりと通りを眺める。
白煙が夜空へと吸い込まれ、ダウンジャケットに包まれた体が少し震える。
昨夜の樹里さんを思いだし溜息を吐く。そしてその苛立ちを椿サンにぶつけようとしている自分に、また溜息が零れる。

『ただのセックスではない駆け引きだ』
『甘ったるく接してブチンと切る』
『引っ掻かれた頬がまだ痛い。それが腹立たしいわけじゃ無く、下心無しの清楚ぶった仮面をズタズタにしてやりたいんだ』

一日中考えて辿り着いた答え。
七星では早目に仕事を切り上げたくて、あまり飲まなかった。
だから、アルコールのせいで抱いた、と逃れることは出来ないだろう。

電車の過ぎ去る音、そして夜中とは言え幾多の乗車客の足音。
目線を上げると、フェイクファーの柔らかそうなアイボリーのコートが近付いてくる。
真っ黒の髪がサラサラと風に靡く。

来たか――

今から抱くその人に軽く手を挙げて、俺は良心と一緒に吸い殻をダストボックスへと投げた。


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