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旅立ち
【フェチ/マニア 官能小説】

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旅立ち-3

 K子はすっかり明るくなり、卓球部のキャプテンとして部員を引っ張る立場になっていた。もうこの高校には体罰も存在しない、はずだった。でもじつは、W先生ら一部教師の体罰は密かに続いていたのだ。その日、3年生になったK子が1年ぶりに保健室に駆け込んできた。「どうしたの?」「W先生が授業を受けさせてくれないんです」「受けさせてくれないって、なぜ?」「私がお仕置きを拒否したからです」「お仕置きを? ちょっと、よく話を聞かせて」。
 K子の説明によると、こうだった。その日は前の授業、A先生の実験の授業が延びてしまい、後片付けをしてから急いで更衣室に走った。でも片付けに手間取ったK子ともう一人の生徒が、次の体育の授業に遅刻してしまった。すると、パドルテニスのラケットを持ったW先生が体育館の前で待ち構えていた。「それから?」「体育館の壁に両手をついてお尻を突き出せって、いつものことなんです」「いつものことって、みんな今まで黙って従ってたの?」「はい、いまは竹刀じゃなくて、パドルテニスのラケットです。でも今日は、私拒否しました。だってお仕置きされるような悪いこと、私何もしてません」「どのくらい遅刻したの?」「2分です」「2分? で、もう一人の子は?」「ちゃんと壁に両手をついて、W先生にお尻を叩かれました。その後、先生は私に出てけって」。私はK子の目を見た。あの泣き虫だったK子の瞳に涙がない。私がK子の目を見つめるとK子はきっちりと私を見つめ返してきた。強い意志のこもった澄んだ瞳だった。「それでいいのよ。あなた、変わったわね」。私はK子を残して職員室に向かった。そこには授業の空いていたA先生がいた。A先生は事の次第を聞くと自ら保健室に向かって足早に歩き始めた。
「K子、ごめんな。次の授業、体育のW先生だったんだな。俺が片付けはいいから早く着替えに行けって言ってやればよかったんだ」「先生は悪くないよ」。K子は微笑みながら言った。「でもなんで今まで黙ってたんだ?」「なかなか逆らえないし。それにW先生って、イヤだなあと思うことも多いけど、お仕置きされても仕方ないなあと思うときも結構あるんです」。私はA先生の肘をつついて言った。「ね、K子ちゃん、変わったでしょ?」。

 W先生は戒告処分になった。もう管理教育の息の詰まるような時代は終わろうとしていた。K子は3年の秋を迎えていた。1年の頃から見てきた私には、もうK子は妹も同然だった。その日の放課後、K子は久しぶりに保健室にやってきた。「先生、先生と話がしたくなっちゃった。いいかな?」「いいよ。何かあったの?」「ううん、たいしたことじゃないんだ。じつは私、A先生にお仕置きされちゃった」「え?」。驚いて聞き返すと、K子の悪戯っぽい視線にぶつかった。「A先生に、お尻を平手打ちされてしまったんです」「嘘でしょう、まさかA先生が」。
 K子の話はこうだった。その日は危険な薬品を使う実験の授業だった。風の強い日だった。A先生は薬品の取り扱いに気をつけるように、そして窓を決して開けないように注意を与えていた。その注意をK子は聞き流していた。そして窓を少しだけ開けたまま実験を始めたら、バーナーの火が突然大きくなってカーテンに燃え移ってしまったのだという。ちょっとした小火騒ぎになり、怒ったA先生にそのあとの休み時間、実験室の隣の小部屋にK子は呼ばれた。「先生、ごめんなさい。もう少しで校舎燃やしちゃうとこでした」「バカ野郎! カーテンが燃えようが校舎が灰になろうがそんなことはどうでもいいんだよ。もし火がK子の服に燃え移ってたら、今頃どうなってたかわかってんのかよ」。そう言うと、呆然としているK子を抱えて自分の膝の上に乗せ、お尻にピシャピシャと平手打ちを始めたというのだ。「私は泣きながらごめんなさい、ごめんなさいって言い続けていたんです。でもなんだか不思議な気持ち、妙な安心感があったんです。私、親に叩かれたことないけど、先生というよりお父さんに叱られてるような気がしてきちゃって」「ふーん、どのくらい叩かれたの?」「よくわかんないけど、30発くらいかな」。K子は妙にはしゃいだ感じで、なかなか興奮が冷めなかった。


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