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ネコ系女
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ネコ系女 #2-6

「その上まだついてくる気なの!?さっさとももちゃんトコに帰ればいいじゃん!」

一気にまくし立てたものだから、興奮した心臓がドキドキして酸素を欲していた。まだ頭の中が真っ白で、何を言っていたかもよく分からなかった。さっきまでマシンガン並みに怒鳴っていたのは私なのかどうかも分からないくらい。
タマが眉をしかめて、口を真一文字にギュッと結んでいる。
その顔を見て、ああ私はこの人を傷付けたんだと認識した。

「俺、そんなつもりじゃなかったんだ…」

数分前までニコニコしていた人物とは思えない。花が枯れたみたいに項垂れていた。今にも泣き出すんじゃないかと思うほど、声が震えている。

「今日の出来事は俺の中で嬉しくて、ケーキ屋さんにも感謝してて…だから、また会えてテンション上がっちゃって…」

すみません、とタマは呟いた。

「あとこれ渡そうと思って」

タマが私に何かを差し出した。それはタマのジャケット。タマの座っていた席に掛けられていたのを覚えている。そういえば、よく見るとタマはこの寒い中、白いシャツ一枚にストールという昼間と変わらぬ薄着だった。

「ケーキ屋さん、寒そうだったからさ」

そう言ってタマは少し笑った。
フワッとジャケットを私の肩に被せて

「風邪引かないでね!」

とだけ言うと私に背を向けて歩き出した。

「いらない!」

私はその背に向かって叫んだけど、タマは振り返ることもなくとうとう見えなくなってしまった。


【ネコ系女は意地っ張り】


人に優しくするのは苦手だった。
でもそれを悪いと思ったことはない。だって、誰だってそうじゃん。
優しくされたから優しくしなきゃいけない、とか昔から煩わしくて、それなら優しくされなくていいから私も何もしないと思うようになった。
実際、私は何もしなくても男達はチヤホヤしてくれたし、わがままも通った。
まるでネコみたいだと思った。
人の顔色なんて気にしない。自分の好きなように、思うままに生きるネコ。
その生き方を恥じないようなその凛とした佇まいが、格好良くて美しくて、いつからか自分とネコを重ねるようになっていた。
だから、私への下心や見返りを求めて言い寄ってくる人たちを傷付けようがヘコませようが、私は痛くも痒くも無い。
そんなチンケなもん求めるからいけないんだと、そう思っていた。
でもたまに、本当に至極稀に、無償で優しさを提供してくれるボランティア精神の強い人がいる。
そういう人も私は苦手だ。
私がその優しさに応えてあげられないから。
だから避けて生きてきた。なるべく関わらないように。
それでも温かく包み込もうとしてくれる子がいた。
姫代だ。
そして、姫代以外にもまた一人現れてしまった。


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