ネコ系女 #2-5
「じゃあ、そろそろ…帰ろうか?」
友達が私の望んでいた言葉をやっと言ってくれた。
その言葉をどれだけ待ちわびたことか。
さっさと私は席を立って出入口に向かった。そのすぐ脇にレジがあったのでそこで止まる。
一応財布をバッグから取り出して、お金払いますよアピールをする。
それぞれペアになった男が女の子にここは俺が、と財布をしまわせた。
私も当然、誰か払ってくれるだろうと思い友達と一緒に外に出た。
ヒンヤリとした外気が意外と冷たく、失敗したと思った。
日中は暖かかったので、七分で袖口のゆったりとしたチュニックを着て来てしてしまった。
無意識で腕をさする。
「またね朝希。行こ?」
友達が枝毛に上目遣いで話し掛ける。
「私達も。朝希バイバーイ」
顎髭はまだ私をちらちら見ていたが、もう一人の友達と夜の街へ消えていった。
私は引き吊った笑顔で手を振り続けるしかなった。
【ネコ系女は我慢出来る】
「みんな行っちゃったね」
ほわんとした声が隣から聞こえて来たが、私は無視して歩き出した。
タマの声を聞いているとイライラする。
【我慢出来るけどそれはほんの少し程度】
「あ、ちょっと待って!」
私を追い掛けてくるムカつく声。それと一緒に聞こえるパタパタという足音。
あームカつく。
何で待たなきゃいけないの。
何でついてくんの。
何で私なの。
何であんたがここにいるの。
「ちょっと、どこ行くの?」
肩にタマの手がのせられて、私は我慢の限界に達した。
立ち止まってくるりと振り返り、「やっと止まった」と喜ぶタマを睨み付けた。
「どこって私の家に決まってんでしょ!あんたとどこに行こうってのよっ」
切れ長の目が驚いたように見開かれている。そりゃそうか。道端で大声出せば、誰だって驚く。
「私はねぇ、ネコなの!綺麗なネコ!ネコはね自由気ままなほど可愛いの!分かる?それが私なの!」
考えるよりも先に口が開く。
瞬きもしないできょとんとしているタマを見ていると、口から本音がぽんぽん飛び出してきた。
「なのにあんたがペラペラペラペラ自分の話ばっかするから…!私の邪魔ばっかするから…!何これ!!私、惨めじゃん!」
タマさえいなければ、私は今頃誰かと一緒に歩いていたかもしれないのに。
私以外、いい雰囲気なっちゃって。何が行こ?よ。何が私達もよ。
こんな惨めな気持ちなったことない。
…劣等感感じるじゃん。